
「2100年の人口は6300万人!人が消える地方で公共サービスはどこまで持続可能か?」で詳しく書いたように、奈良市は人口減少社会における行政と行政サービスのあり方を捉え直すため、「paramita(パラミタ)」が中心となって設立した「Local Coop 大和高原」とともに、資源ゴミの収集やコミュニティバスの運営などさまざまなプロジェクトを進めている。
なぜ奈良市はある種の社会実験とも言えるLocal Coopプロジェクトを始めたのか。市長の仲川げん氏に話を聞いた。(聞き手:篠原匡、編集者・ジャーナリスト)
◎第1話「2100年の人口は6300万人!人が消える地方で公共サービスはどこまで持続可能か?」
◎第2話「住民が減り続ける中で公共サービスを維持するには?悩み抜いた奈良市が辿り着いた解答」
◎第3話「『議会でなければできないことは何か?』Local Coopの背後に隠された壮大な構想」
──地域の人口が減る中、住民の自治と共助によって地域の持続可能性を高めるという取り組みは、今後の日本において不可欠なものだと感じています。資源ゴミの収集やコミュニティバスの運営など、行政サービスを住民参加の共助で行うというプロジェクトを月ヶ瀬地区で始めた理由についてお聞かせください。
仲川げん氏(以下、仲川):僕が市長に就任した2009年には、月ヶ瀬地区に1700人の住民がいましたが、今は1200人を切っています。高齢化率も48%と奈良市内の平均よりもだいぶ高い。「限界集落」は高齢化率50%以上という定義ですが、このままだと数年以内に限界集落になるのは間違いありません。
このまま高齢化と人口減少というマクロの流れに身を任せるのか、それとも困難はあるけれども持続可能な地域を作るために挑戦を続けるのか。僕は人ができないと言っていることでも、あきらめずにやり切りたいと思う性格です。そこで、知恵を絞り、何かに挑戦することで活路を見出したいと思いました。これが、理由の一つです。
もう一つは、月ヶ瀬が自立度の高い地域だと感じたから。奈良市の東半分、いわゆる東部地域には、月ヶ瀬を含め7つの地域があります。それぞれ合併した時期は異なりますが、もともとは町や村として独立しており、地域の大半が中山間地という特徴があります。
その中でも、月ヶ瀬は旧月ヶ瀬村の時代から、自立心の旺盛な土地柄として知られていました。平成の大合併で奈良市と一緒になりましたが、村の財政的に何ら問題はなく、救いを求めての合併ではありません。
今回のLocal Coopは住民自治と住民参加の共助がポイント。その意味で、住民のみなさんが精神的に自立している月ヶ瀬から始めるのが一番いいと思いました。これが、月ヶ瀬から始めた理由です。
──Local Coopの本質は、それまで行政が手がけていた行政サービスを「共助」の名の下に、住民に移管していくということだと思います。こうした行政サービスに住民を巻き込むという問題意識はいつから持っていたのでしょうか。
仲川:Local Coopというアイデア自体はNext Commons Lab(NCL)の林篤志さんが中心となって提唱しているものですが、東部地域の将来については、15年前に市長になったときから懸案としていました。