そもそも行政サービスを株式会社がやってはダメなの?

仲川:そういうところを根本的に変えようと、軽井沢構想の後、いろいろと考えるようになりました。その中で、ドイツのシュタットベルケの存在を知ったんです。

 シュタットベルケとは、自治体が出資する公社で、電気やガス、水道、公共交通、廃棄物収集などの公共サービスを手がける組織。ただ、自治体出資の公社ではあるものの、運営は民間企業が担うという特徴があります。ハコは公共、運営は民間という形態です。

 行政出資の会社というと三セクを思い浮かべてしまいますが、行政がすべてを担うのではなく、かといって完全な市場主義でもなく、場合によっては地域の人が出資するような経済的に自立した公益の担い手が、これからの行政サービスの担い手としてふさわしいのではないか──。

 そう思うようになって奈良県内を見渡すと、県内の水源地でもある川上村には「川上社中」というシュタットベルケのような存在があった。そこで、われわれも具体的なアクションを起こしたいな、と。

──それで、Local Coopに関心を持った、と。

仲川:そうです。そもそも行政サービスを株式会社がやってはダメなの?という素朴な疑問はずっと持っていました。

 税金にしても自治体にしても、ずっと昔からあったわけではなく、必要性があって生まれたツール。個人で負いきれないリスクや、一人ではできないような作業を共同体で担うというところから生まれたものだと思います。

 そのニーズがなくなっているのであれば、こうした機能は必要ありません。ニーズがあるとしても、これまでのような税金を徴収し、それを原資に行政がサービスを手がけるというやり方が最適なのかどうかはわからない。集めたお金を株式会社に払って、同じサービスが得られるならそれでいいのかもしれません。

 そんなふうに妄想していた時に、林さんのLocal Coop構想を聞き、奈良市でも地域を一つ選んでLocal Coopを社会実装したいなと感じた。それで、今回のプロジェクトに手を挙げました。