今後はONOONOだけでなく、他の公共施設の管理を委託することも奈良市は考えている今後はONOONOだけでなく、他の公共施設の管理を委託することも奈良市は考えている

 2008年の1億2808万人をピークに人口が減少に転じ始めた日本。国の人口推計では、2056年には1億人を下回り、2100年には6300万人に半減する見込みだ。本格的に地域住民が減り始める時代に、どのように暮らしとコミュニティを維持していけばいいのか。奈良市や三重県尾鷲市で始まったLocal Coopの取り組みを描いた連載の3回目。(篠原匡、編集者・ジャーナリスト)

◎第1話「2100年の人口は6300万人!人が消える地方で公共サービスはどこまで持続可能か?
◎第2話「住民が減り続ける中で公共サービスを維持するには?悩み抜いた奈良市が辿り着いた解答

 現状では、自治体に流れ込んだ税金に対して、自治体が予算案を作成し、議会が審議するというプロセスをとっている。ただ、「スピード感に欠ける」と奈良市長の仲川が吐露するように、定例議会は年4回で、住民の声を反映するには一定の時間がかかる。

 それに対して、Local Coopが収益を上げ、稼いだお金の使い道を地域住民が決められるようになれば、わざわざ議員に陳情し、役所の作る予算案にプロジェクトをねじ込む必要もなくなるだろう。直接民主主義の実現である。

 実は、奈良市はそのための実験を進めようとしていた。いきなり「住民自治だ」「住民自らによる意思決定だ」と言っても伝わらないため、月ヶ瀬の450世帯にタブレット端末を配布し、慣れてもらおうと考えていたのだ。

 例えば、月ヶ瀬地区にはジャンボかぼちゃの重さを当てるイベントがあるので、その重さをタブレットを通して投票したり、地域のお祭りで予算の使い道を投票したりというイメージである。

 この予算案は金額が大きすぎたため議会によって否決されたが、タブレットによる直接民主主義による住民自治は、仲川と林の単なる思いつきではない。

「議会でなければできないことは何か。間接民主主義のほうがいいことは何なのかということは、改めて考えるべきだと思います。その中デメリットがあれば残せばいいし、ないのであれば別のあり方を考える。究極、市長という存在が必要かどうかも怪しいと思っています」。そう仲川は断言する。

 現時点では頭の体操に近いが、仲川や林の視界には、地域住民が参画したLocal Coopが行政サービスを代替し、共助を通して得た資金の使途を自分たちで決めるという未来が映し出されている。

 その意味で言えば、自治体を補完するサブシステムであると同時に、国を中心とした既存のシステムに穴をあける存在でもある。