
2008年の1億2808万人をピークに人口が減少に転じ始めた日本。国の人口推計では、2056年には1億人を下回り、2100年には6300万人に半減する見込みだ。本格的に地域住民が減り始める時代に、どのように暮らしとコミュニティを維持していけばいいのか。奈良市や三重県尾鷲市で始まったLocal Coopの取り組みを描いた連載の2回目。(篠原匡、編集者・ジャーナリスト)※文中敬称略
◎第1話「2100年の人口は6300万人!人が消える地方で公共サービスはどこまで持続可能か?」
東西に長い奈良市は人口が集まる西半分に比べて、東半分の大和高原は山がちで高齢化と過疎化が進んでいる。現に、月ヶ瀬地区の高齢化率は限界集落の手前である48%。同じ東部地域の田原、柳生、大柳生、東里、狭川(さがわ)、都祁(つげ)も似たような状況だ。放っておけば、その状況はさらに悪化していく。
「東部地域の振興については、市長になった2009年からの懸案でした」。市長の仲川げんは当時のことを振り返る。

もう一つの懸案は、人口の少なさに起因する行政効率の悪化である。
そもそも人口密度の低い東部地域は行政サービスの効率が悪い。さらなる人口減が見込まれることを考えれば、同じレベルのサービスを提供することはだんだんと難しくなっていく。そうなれば、暮らしは今以上に不便になり、地域を離れる住民が増えてしまう。まさに、負のスパイラルである。
こうした課題に頭を悩ませていた仲川は、旧知の林篤志からLocal Coopプロジェクトの話を聞き、「共助による持続可能な地域づくり」というコンセプトに共鳴。月ヶ瀬を舞台にLocal Coopを実装しようと考えた。
「行政コストを下げるだけでなく、新しいチャンスを作るきっかけにしたいという思いもありました。Local Coopへの委託でコストが下がったのであれば、その分は地域の活性化など地域の再投資に向けていく。それが、地域の持続可能性を高めると思うので」(仲川)。
ここで言う林とは、Local Coopという概念を生み出した一般社団法人Next Commons Lab(NCL)の代表理事である。
そうして誕生したLocal Coop 大和高原(LC大和高原)では、委託事業として資源ゴミの回収やコミュニティバスの運行、ワーケーションおよび地域住民の交流拠点として奈良市が整備した月ヶ瀬ワーケーションルーム「ONOONO(おのおの)」の運営を手がけている。

