循環型経済を実現するためのプラットフォーム

 かつての集落は農作業や屋根のふき替え、道路の補修などは集落の人々が力を合わせて行っていた。だが、国が豊かになり、公共サービスが手厚くなるにつれて、公共サービスの提供者と受益者が明確に分かれるようになった。結果、コミュニティの紐帯が寸断されつつあるのが現状である。

 人や資金などリソースが十分にあった時代はそうした公共サービスのアウトソースも機能したが、人口が減る時代に同じやり方を維持することは難しい。その時代にまずすべきことは、弱体化している住民同士のつながりを再構築すること。Local Coopは、そのためのプラットフォームとしても位置づけられている。

 同時に、循環型社会や循環型経済を実現するためのプラットフォームという意味もある。いわゆる、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現だ。

 ONOONOの資源回収ステーションには、「MEGURUーBIO」という小型のバイオ装置が設置されている。生ゴミをメタンガスと液体肥料に変える装置で、サステナビリティ関連のビジネスを手がけるアミタホールディングス(HD)が開発した。第1回で触れた資源ゴミの回収ボックスも、アミタHDが提供したものだ。

 ONOONOに来なければ装置は使えず、生成されるメタンガスも「MEGURUーBIO」に設置されたコンロでしか使えないなど、現状では実証実験の域を出ない。ただ、地域内で生ゴミの回収などが可能になれば、公共施設を中心に、こうした装置を活用したエネルギーの地産地消が可能になるかもしれない。

ONOONOに設置されている「MEGURUーBIO」。右側のシンクのような場所に生ゴミを投入すると、生ゴミが分解されてメタンガスと液肥になる。左側はメタンガスを燃料にしたガスコンロONOONOに設置されている「MEGURUーBIO」。右側のシンクのような場所に生ゴミを投入すると、生ゴミが分解されてメタンガスと液肥になる。左奥はメタンガスを燃料にしたガスコンロ
生ゴミを投入するシンク部分生ゴミを投入するシンク部分

 そして、Local Coopが目指しているのは、共同体における意思決定のプラットフォームである。

 今のところ、Local Coopの収入は資源ゴミの売却益や「おたがいマーケット」などの手数料収入に限られている。ただ、公共施設の運営管理や生ゴミの回収などにLocal Coopの活動が広がれば、得られる収益も増えていく。その時に、地域住民がLocal Coopを通して使途を決めるという未来を描いているのだ。(続く)

篠原 匡(しのはら・ただし)
編集者、ジャーナリスト、蛙企画代表取締役
1999年慶応大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長を経て、2020年4月に独立。
著書に、『人生は選べる ハッシャダイソーシャルの1500日』(朝日新聞出版)、『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社)、『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』(朝日新聞出版)
など。『誰も断らない 神奈川県座間市生活援護課』で生協総研賞、『神山 地域再生の教科書』で不動産協会賞を受賞。テレ東ビズの配信企画「ニッポン辺境ビジネス図鑑」でナビゲーターも務めた。