Local Coopについて、当の住民はどう思っているのか?

 このLocal Coopについて、当の住民はどう思っているのだろうか。「行政サービスを自分たちの手で」と言われてすぐに理解できるものなのか。自分たちのコミュニティがある種の社会実験の舞台となることに抵抗感はないのか。

 現状では、Local Coopを肯定的に見る人もいれば、何か得体の知れないものを見るような人もおり、住民の反応はまちまちといったところだ。

 月ヶ瀬で民泊「森の茶論」を営む猪飼康紘はLocal Coopの活動を積極的に後押ししている一人だ。「これからの日本はどんどん人が減っていく。その中で、未来の生活をつくり出す舞台として行政が月ヶ瀬を選んだということ。月ヶ瀬に大きな宿題を与えていただいたのだから協力すべきだと思う」とLocal Coopにポジティブだ。

猪飼夫妻とLocal Coop 大和高原のメンバー猪飼夫妻とLocal Coop 大和高原のメンバー

「おたがいマーケット」や「大和高原直送便」で連携している月ヶ瀬郵便局の局長、今井吉則もLocal Coopのよき理解者である。

「ゴミの分別は、80~90%は定着したかな。高齢者はバスに乗る習慣がないので、コミュニティバスでの移動にはまだ慣れていないね。奈良市やLocal Coopの言う共助についても、まだまだ住民はついてきていない。でも、スタートとしてはよくできていると思う。まだまだ始まりに過ぎないけれど」

月ヶ瀬郵便局の今井吉則局長月ヶ瀬郵便局の今井吉則局長

 こうした声がある一方で、「行政から切られた」という感覚を持つ住民もいる。同じ税金を支払っているのに、住民の多い市街地で受けられる行政サービスが月ヶ瀬では受けられないのはおかしいという意見である。

 現実には、地域振興のために大和高原エリアにはさまざまな形で公共の資金が投入されているのだが、そうした事実は必ずしも住民には伝わっていない。

 また、Local Coopの実務をになう地域おこし協力隊の3年間の期間が終わった後どうなるのかという不安の声もあがっている。彼らが任期を終えた後、同じように人が集まるのか、次の人が今の隊員のように動けるのかという不安である。