奈良市が抱えていた切実な問題
仲川:実際、東部地域の振興についてはいろいろと仕掛けていて、市長に就任した当初は「関西の軽井沢構想」を掲げていました。
東部地域は「大和高原」と呼ばれているように高原エリアで、大阪や京都など関西のどこのエリアからも1時間程度でアクセスできます。そこで、軽井沢のような避暑地としてブランド化できないか、と考えたんです。東部地区に新しい付加価値を与えないと、衰退するだけになってしまいますから。
そして、いろいろとモデルツアーを企画したり、活性化のための仕掛けを打ち出したり、六次産業化を推進してみたりといろいろチャレンジしましたが、スマッシュヒット程度で大きな動きにはなりませんでした。
──その手の地域振興は続けていくのが難しいですよね。
仲川:やはり何かのアクションを起こすにも財源がいるし、担っていく人材も必要になります。そう考えると、単なる対症療法ではなく、OS(オペレーティングシステム)を入れ替えるような、抜本的な対策を打つ必要があると感じていました。
こういう地方創生的な文脈とは別に、行政の経営効率をどのように高めていくかという問題意識もありました。

──Local Coopを通して、行政コストを削減していくという狙いがあった?
仲川:行政効率というと、単なるコスト削減をイメージするかもしれませんが、コストを下げれば下げるだけ正解というわけではありません。同じサービスを提供するならよりコストを下げる、同じコストをかけるのであればより付加価値の高いサービスを提供する。この部分はどちらでもいいのですが、東部地域は人口密度が低いため、どうしても行政サービスの効率が落ちるという面があります。
人口が減少している今の時代、これまでのような行政サービスを提供することは難しくなっています。それでは、民間のサービスに代替できるかというと、そもそもの人口密度が低いのでそれも難しい。そうなると、生活の選択肢が減るため、多様なニーズを満たすことができず、地域を離れていく人が出てしまう。
──まさに負のスパイラルですね。