宮崎で震度6弱の地震、記者会見する南海トラフ地震の評価検討会の平田直会長(左)(写真:共同通信社)

気象庁は、8月8日午後4時42分ごろに宮崎県の日向灘沖を震源とするマグニチュード(M)7.1の地震が発生したことを受け、同日夜、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を出しました。南海トラフ沿いで巨大地震が発生する可能性が高まったと判断。住民や自治体などに対し、今後1週間は大きな地震に備え、防災対策に万全を期すよう促したのです。南海トラフ地震臨時情報が出されるのは、2017年にこの制度ができてから初めて。「注意」の内容はどのようなものでしょうか。そもそも南海トラフ地震臨時情報とは、どのようなものでしょうか。やさしく解説します。

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地震予知で“敗北”、巨大地震への注意を呼びかける制度に

 南海トラフ地震臨時情報を発表する仕組みは、2017年から始まりました。

 それまで日本では官民一体となって東海地震の予知に力を入れる体制を取っていました。1978年には東海地震の予知体制などを定めた「大規模地震対策特別措置法」が制定され、その下で前兆をキャッチする仕組みが整えられたのです。

宮崎で起きた震度6弱の地震で倒壊した家屋(写真:共同通信社)

 ところが、2011年3月の東日本大震災が事態を大きく転換させました。大震災の2日前に東北の三陸沖で起きたM7.3の地震を大震災の「前震」と評価できなかったとして、専門家らは地震予知の“敗北”を宣言。政府の中央防災会議は2017年に「現在の科学技術では確度の高い地震の予知は困難」と結論付けて予知体制を取りやめたのです。

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 その代わりにできたのが、M6.8以上の地震やそれに関連する異常な事象を観測した際、次の巨大地震への注意を呼びかける制度として、「南海トラフ地震臨時情報」の制度を設けました。

 そもそも、南海トラフ地震とはどのようなものでしょうか。