8月8日、宮崎県の日向灘で地震が発生、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報・巨大地震注意」発表しました。巨大地震発生の可能性が一段と高まった状態と言えますが、もしこの猛暑の中で地震に襲われてしまったら熱中症対策が絶対に必要になります。ところが避難所となる公的施設でその対策がとられているところはまだ少ない状況です。この問題をレポートした科学ジャーナリスト・添田孝史氏の記事を再掲載します。(初出:2023年10月4日)
(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
今年の夏は暑かった。気候変動の影響で、これからはもっと気温が上がるだろう。
こんな酷暑の中で大災害による停電が続いたら熱中症が心配だ。猛暑日、熱帯夜が続く避難生活を、エアコンなしで乗り切れる自信は全くない。南海トラフ地震や首都直下地震では何日も停電が続くが「災害時ぐらいエアコン無しでがまんしろ」と片付けられる気温ではなくなっている。
もはや災害時の冷房は、飲料水の確保と同じぐらい生命の維持に不可欠だろう。停電した時でもエアコンの使える避難所は少しずつ増えているが、全国に早く広める必要がありそうだ。
停電時でもプロパンや中圧ガスでエアコンは動く
大阪府寝屋川市の中学校の体育館には、停電時でも動かせるエアコンが取り付けられている。普段は安い都市ガスで運転し、それが止まっても備蓄したプロパンガスで72時間は空調と照明などに使う発電ができる。
整備のきっかけは、2018年9月4日に関西を襲った台風21号*1だった。最大瞬間風速秒速58mを超える強風で1300本以上の電柱が折れ、延べ220万軒の大規模停電が発生した*2。
「避難所に来た人から、熱中症の対策が必要でないかと言われ、検討が始まった」と寝屋川市の担当者は話す。現在は市立中学校11校の体育館にこのエアコンを備えている。
東京都足立区では、体育館の空調をどうするか2016年から調べていたが、「せっかくつけるなら停電時にも動くものを」と寝屋川市と同様のエアコンを採用した。2019年の台風で避難所を開設した時に、体調を崩さず長時間すごせる配慮が必要だと実感し、配備を加速したそうだ。今は97校に設置している。