せっかく生き延びても、避難所で命が危ぶまれる?
「レジリエンス住宅」という言葉が防災の分野では注目されている。地震の揺れなどに強いだけでなく、災害後にライフラインが途絶しても、自立生活できる性能を持つ建物のことだ。
太陽光発電や蓄電池、電気自動車からの給電、ガスを使った燃料電池(エネファーム)などを備えたレジリエンス住宅ならば、酷暑でも乗り越えられるかもしれない。
非常用発電機を備えた集合住宅も増えているが、非常用エレベーターや給水ポンプなどを動かすのがせいぜいで、各家庭のエアコンまで動かせる能力を持つところはほとんどない。集合住宅で暑さに耐えるのは難しそうだ。
そうすると、レジリエンス性能を持たない戸建てや、集合住宅の住民の多くにとっては、避難所が最後のよりどころとなる。しかし冒頭で紹介したような停電時でも冷房が動く避難所は、まだごくわずかしかない。
停電対策以前に、そもそも冷房装置のない体育館が多い。文科省の調査では、冷房を備えた学校体育館は15.3%*11だけだ。
これから整備する学校では停電時にも動かせる性能だけでなく、一部の学校が取り入れ始めたように断熱性能を上げたり、地中熱を利用したりして*12、省エネで避難生活を継続できる工夫も欲しい。それは平常時の熱中症対策にも役立つ。
揺れや津波から生き延びたのに、避難所で熱中症になって命を奪われてはたまらない。必要なのは一年のうち4分の1ほどの期間だろうが、大災害時の冷房確保を甘くみていると、防げたはずの犠牲者を増やしてしまうことになるだろう。