東日本大震災直後、宮城県南三陸町志津川 で設置された仮設トイレの周囲を整備する被災男性。 2011年03月18日(写真:共同通信社)

(科学ジャーナリスト:添田 孝史)

 大地震が各地で続いています。地震後、飲料水や食料は半日ぐらいなら我慢できるかもしれませんが、トイレは待ったなしです。水道が断水したり、下水道が壊れていたりすると、自宅のトイレは使えません。人は1日平均5回もトイレを使うそうです。さあ、あなたはどこでするか、考えていますか。

 トイレの回数を減らすため飲み物を控えてエコノミークラス症候群から災害関連死を引き起こしたり、汚物の不適切な始末で衛生状態を悪化させたりと、トイレを巡る環境は被災後の健康に大きく影響します。

 阪神淡路大震災から、災害時のトイレ事情はどう変わったのか。日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会代表幹事の山本耕平さんに話を聞きました。

日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会代表幹事の山本耕平氏

災害時のトイレ計画、多くの自治体で手つかずのまま

――今年1月の能登半島地震で、トイレ事情はどうだったのでしょうか。

 被災地の中でも場所によって事情がかなり違うので、全体がどうだったかはまだ把握しきれていません。他のライフラインと違って、そういう調査をきちんとやる公的機関がないのも問題の一つです。

 被災地では、断水と停電が広がりました。停電は比較的早く復旧していますが、断水が続く限り水洗トイレは使えません。

 能登半島地震では、発災当日に経済産業省から要請があり、携帯トイレを送る準備が始まっていました*1。メーカーが金沢市内の支援物資集積所までトラックで運んで、自衛隊が陸路やヘリで各被災地に運び、翌2日夜には珠洲市まで届いています。

 携帯トイレは、阪神淡路大震災の経験から、たくさんのメーカーが作るようになっています。排泄物を固める凝固剤と袋がセットになっていて、袋から臭いが漏れにくいようにするなど改良も続けられています。

 工事現場やイベント会場で見かけるような仮設トイレも、レンタル業者やメーカーは要請が来ることが予想できたので、トラックの手配などを発災当日から進めたと聞いています。

 ただし道路事情が悪く、なかなか現地に到達できなかった。そしてもう一つ問題は、苦労して現地に着いても、どこにトイレを設置するのか、良くわからなかったそうです。

 どこに避難所があって、その敷地のどこに、どれだけ仮設トイレを置くのか、事前に計画を作っておいて欲しいのですが、災害時のトイレ計画まで作成している自治体はまだ多くありません。

*1 日本トイレ協会 能登半島地震緊急報告 2024年2月15日