能登半島地震による大規模火災でほぼ全域が焼失した石川県輪島市の「輪島朝市」周辺。3月27日時点(写真:共同通信社)

 119番通報しても消防車が来ない、救急車が来ない。いや、いずれも来られない——。「30年以内に70%」の確率で起きるとされる「首都直下地震」。被災して道路が寸断、沿道の電柱や建物が倒れて路上をふさぐ。消火が遅れたら、木造密集地は瞬く間に火災が拡大するだろう。住民は「助け舟」が来ないという事態をどれだけ想定できるだろうか。

 一方で2011年3月11日の東日本大震災後に議論が浮上した「首都機能バックアップ論」。その後どうなったのか。能登半島地震から3カ月。このところ首都圏での揺れも目立つ。これを機に首都直下地震の主要課題をあらためて検証したい。

(長竹 孝夫:ジャーナリスト)

地震被災死者7割の1万6000人は火災原因

 首都直下地震の被害想定は――。

 国は、首都直下地震が起きると、最悪の場合、死者はおよそ2万3000人。発災直後に約5割の地域で停電し、上下水道は都区部で約5割が断水、約1割で下水道の使用ができないと想定している。

 江戸時代から大正の関東大震災に至るまで、過去の地震の歴史記録などをもとに、近い将来発生すると予想される地震である。震源の異なる複数の地震が想定され、うち首都中枢機能への影響が最も大きいとされるのはマグニチュード7.3の「都心南部直下地震」だ。

 冬の夕方、風が強い最悪の場合は、全壊または焼失する建物は61万棟に上り、うち火災で焼失するのはおよそ41万2000棟とされている。死者の7割にあたる約1万6000人は火災が原因で死亡すると予測。けが人は約12万3000人、救助が必要な人は約5万8000人、避難者は約720万人に達すると想定されている。

首都直下地震の被害想定(画像:共同通信社)

 電気や上下水などのライフラインや交通への影響は長期化し、鉄道も最悪1カ月程度運転できない状況が続くとされる。一方、想定では火災対策を徹底し、建物を耐震化すれば死者は10分の1の約2300人に減らせると対策の効果も示されている。

 東京は、多くのや車両が首都高速道路や幹線道路、都道、区道などを行き交う。いずれの道路も救急車や消防車にとって欠かせないが、沿道の電柱や老朽化した建物の現状はどうか。そして倒れたらどうなるのか。