能登半島地震で倒壊した家屋(写真:ロイター/アフロ)

 2024年、日本は元日から最大震度7の「令和6年能登半島地震」に襲われた。石川県から新潟県、富山県、福井県まで強い揺れが発生し、甚大な被害を出した。倒壊した家屋、火災で焼失した建物、津波で流された家屋などの悲惨な映像を目にするたびに、生活再建への道の険しさを痛感するが、その手助けになってくれる地震保険の加入率は極めて低い。「地震大国」なのに、いったいなぜなのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。(JBpress編集部)

>>【表】気になる地震保険料の目安ほか

地震保険の加入世帯は「3世帯に1世帯」にとどまる

 すでにご存じの方も多いかもしれないが、地震保険は火災保険とセットで加入することになっており、地震保険単独では加入できない仕組みになっている。地震の揺れによる家屋の倒壊、地震にともなう火災による焼失、津波による流出など、地震による被害は火災保険ではカバーされない。火災保険に付帯する地震保険に入っていないと補償されないのだ。

 では、火災保険に加入している世帯のうち、どれくらいの世帯が地震保険に加入しているのか。火災保険の「付帯率」をみると、【図表1】のように、2022年度末で全国平均が69.4%となっている。


拡大画像表示

 火災保険に加入している人の7割近くは地震保険にも入っているわけだが、火災保険に入っていない人を含めて、全世帯のうち何%が地震保険に加入しているのかという「地震保険世帯加入率」になると全国平均で35.0%。全体では3世帯に1世帯ほどにとどまっている。

 この地震保険世帯加入率を主な都県別に見てみると【図表2】のようになっている。全国平均は35.0%だが、全都道府県のなかで最も高いのは宮城県の53.6%だった。


拡大画像表示

 もともと宮城県は地震が多いため、それだけ意識が高い世帯が多いようだが、特に2011年の「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」後に加入率が上昇し、地震に備える世帯が増えている。同様に、2016年に「平成28年熊本地震」に見舞われた熊本県でも、グラフで分かるように地震のあった2016年度から急速に加入率が高まっている。

 それに対して、今回の能登半島地震で被害の大きかった石川県の地震保険世帯加入率は2022年度末で30.2%にとどまり、全国平均より低い水準だった。このところ、群発地震などが続き、地震への意識が高くなってもよさそうだったが、現実にはそうでもない。

 石川県だけではなく、やはり被害の大きかった富山県は27.0%で、新潟県は26.7%などと低い水準にとどまっている。前述したとおり、火災保険に入っていても地震保険をつけていないと保険金が下りず、火災保険の保険料は掛け捨てになってしまう。その結果、生活再建への道筋が見えなくなってしまう。