
住宅価格が高騰し、なかなか買えなくなっているため、住宅ローンの利用者も減少しているが、主に高齢者を対象としたリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」の利用が好調に推移しているという。一体なぜなのか、住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。
>>リバースモーゲージ型住宅ローンの利用を考えている人が抱く不安とは?
ノンリコース型の導入で利用者が増加傾向に
リバースモーゲージというのは、主に高齢者を対象としたローンで、自宅を担保にして生活資金やレジャー資金などを借り入れ、毎月の支払いは利息のみという仕組みである。元金については利用者が亡くなった時に、相続人が一括して返済することになる。
持ち家である自宅を担保にして生活費などを借りるわけだが、住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施している「リ・バース60」は、このリバースモーゲージの仕組みを利用して住宅を取得するためのローンで、リバースモーゲージ型住宅ローンと言うことができる。
原則的に60歳以上が対象で、リバースモーゲージ型と同様に、毎月の支払いは利息だけでOKだ。
例えば、3000万円を通常の住宅ローンとして金利3%、35年元利均等・ボーナス返済なしで借り入れると毎月返済額は11万5455円だが、年齢が高いと35年返済を利用できないことが多いので、20年返済とすれば毎月16万6379円、15年返済だと20万7174円に達する。これでは、リタイア後の高齢者が返済を続けるのは容易ではないだろう。
それに対して、リ・バース60で元金を据え置いて利息払いだけになれば、金利3%としても毎月の支払いは7万5000円で済む。これならば、リタイアした後も何とか支払っていけるという人が多いのではないだろうか。
元金はやはり利用者が亡くなった時に、相続人が一括返済する。借入額を据え置いている元金に相当する現金で一括返済すれば、相続人が所有し続けることができるが、現金がない場合には、リ・バース60で取得した住まいを売却して一括返済することもできる。
その場合、住宅価格が上がっていれば、売却すると相続人の持ち出しはなくなり、むしろ手元に売却代金の一部を残すことができるが、価格が下がっていると売却代金だけでは足りずに、相続人の持ち出しになってしまう。そのため、リ・バース60の利用に当たっては、相続人である子どもが反対することが多く、なかなか利用が進まなかった。
それが、2018年に非遡及型で売却代金が残債務に満たない場合でも、残った債務を返済する必要のない「ノンリコース型」が採用されてから、急速に申請戸数が増加するようになった。【グラフ1】にある通りだ。