高齢者を対象に、所有する持ち家や土地を担保として融資を受けられるローン商品が「リバースモーゲージ」です。数年前からテレビのコマーシャルなどで目にする機会が増えたこのローンには、どのような特徴があるのでしょうか?
自宅にいながらにして自宅を売却する制度
リバースモーゲージの特徴をざっくり言うと、「今持っている自宅と土地の売却益を先食いする制度」ということになります。あるいは、「自宅にいながらにして自宅を売却できる制度」といってもいいかもしれません。老後に預貯金や年金だけで生活費をまかなうのが難しい場合に、不動産を担保にお金を借りて、生活費の足しにするというローン商品です。
お金の貸し手である銀行にとっては、「契約者が亡くなったときに不動産をもらうことで債権を回収できる見込みなので、その不動産の価値の範囲内で債務者に融資する」という仕組みです。実際には、不動産価値の低下や金利の上昇などのリスクに備えて、融資するお金は不動産の現在価値の50~70%を上限とすることが多いようです。金利も通常の住宅ローンよりやや高めに設定されています。
不動産の売却は相続も絡む難しい問題です。リバースモーゲージを利用するには相続人の同意を得る必要があります。最近では、相続税の支払いが負担になるから不動産を相続しなくてもよいという人が増えていることも、リバースモーゲージのようなローン商品の需要を生んでいるといえそうです。
相続人である子どもが債務を背負う可能性
リバースモーゲージを利用する際に、知っておくべきポイントがあります。
ひとつは、融資額に限度があることです。たとえば毎月一定の借入額を設定していた場合、やがて限度に到達し、それ以上の融資を受けられなくなります。多くの金融機関では、元本の返済は契約者が亡くなったあとに設定されていますが、契約者が長生きした場合は融資を受けられない期間が長くなるので、その点は注意が必要です。
もうひとつは、市場環境の急激な変化により、不動産の担保価値が大きく下落してしまうリスクです。融資額が担保価値を上回った場合には、元本の返済が担保不動産だけでは足りなくなります。その場合は、相続人に返済の義務が生まれます。相続する子どもにとっては、「家も土地もないのに債務だけが残った」というつらい状況になってしまいます。
リバースモーゲージを利用する場合は、相続人となる子どもとしっかり話し合ったうえで、慎重に判断することが求められます。