現金のリスク

 「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマは日本株式。日本人にとってわかりやすく、為替の影響もない投資対象について、あらためて考えてみます。

 筆者はこれまで、さんざん外国株式を持ち上げる、いわば「外国かぶれ」でした。
 とはいっても、やはり日本株式への期待と関心は高いようです。
 先日も、お客様を訪問した時に、「どうせ投資をするのなら、日本の企業に投資をしたい。日本の企業を応援したい」とおっしゃっておられました。

 読者の皆さまも、同じお気持ちの方は多いのでしょうか?

あらためて、日本株式投資のメリット

 日本株式に投資するメリットは、以下の3点に尽きると思います。

  • 同じ円建ての投資なので、為替差益や為替差損といった為替リスクがない
  • 情報が日本語で、また時差がなく、情報収集が容易
  • 時差がないので、(上場株式なら)リアルタイムの投資が可能

 「当たり前のことなのでは?」と思われるかもしれませんが、外国株式への投資では、これらの「当たり前」がありません。

 そして、まだ例外もあるようですが、東京証券取引所では、「1単元は100株」への統一が実現しました。1単元とは、上場株式の最低限の売買単位のことです。
 では「1単元は100株」の何がメリットなのでしょうか?

 それは、1単元が500株や1000株だった株式に投資できる最低金額が、5分の1や10分の1に下がることです。その中には、著名な企業もあったりします。
 10万円未満で投資可能な上場株式が増えたような気がするのは、筆者だけでしょうか?

日本企業と株価の未来を「雇用者報酬」から考える

 しかし、長期的に見て、日本株式に未来はあるのでしょうか?
 そもそも投資は「未知の未来への投資」ですから、未知の未来に期待して、資金を投じることになります。では、日本の株式に期待することができる未来が、果たしてあるのでしょうか?

 未来は未知なので、過去を振り返って、その実績で検討するしかなさそうです。
 各国の株価指数などで比較すると、短期的にはバブルや金融危機などもあろうかと思いますので、ここでは目線を変えて、「雇用者報酬」を引用してみました。

【図表】雇用者報酬の国際比較
雇用者報酬の国際比較出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2019」第1-5表 雇用者報酬より抜粋
各国通貨基準。2005年の値を100として指数化。フランスの2016年以降の値は推計値

 雇用者の中には公務員の方も含まれているとは思いますが、上の図は「雇われている」方の過去のお給料の推移について、長期的に国ごとの比較をしているものです。

 多くの国で左から右に向かって、時間とともに、つまり長期的に、雇用者報酬の数値が伸びているのが分かります。日本も伸びてはいますが、伸びている数値がひと桁少ないようです。

 ところで、雇用者報酬と株式投資の何が関係あるのでしょうか?
 先述の通り、公務員の方も含まれている可能性もありますが、雇用者報酬は企業に雇われて働いている方の給料、すなわち、企業が払っている給料という考え方ができると思います。
 他の国々に比べて、日本の雇用者報酬の伸びがひと桁少ないということは、それを払う日本の企業の「成長もイマイチ」と言えるのではないでしょうか?

 短期的にはバブルや金融危機などに左右される株価ですが、長期的には、企業の成長が株価に反映されるはずです。
 だとすると、結論は、やはり「日本以外の株式投資」になってしまいそうですが……。