(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
保釈中に海外渡航を禁じられていた日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が、レバノンへ逃亡しました。同国のセルハン暫定法相は2日、ゴーン前会長の日本への引き渡しは困難との見通しを示しています。今回、事件を理解するために抑えておきたいポイントをニューヨーク州弁護士のリッキー徳永(徳永怜一)さんに解説してもらいました。
ゴーン氏の容疑はなにか
まずは、なぜゴーン氏は逮捕・起訴されたのか振り返ってみましょう。ゴーン氏の容疑は以下の2つでした。
<金融商品取引法違反>
自らの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪です。昔の証券取引法違反で、堀江貴文氏が逮捕された犯罪です。両者の違いは、堀江氏は過剰売上計上でしたが、ゴーン氏は報酬の過少申告です。
<会社法違反(特別背任罪)>
特別背任罪で日産自動車が検察庁に、ゴーン氏に対して刑事告訴をしました。理由は、ゴーン氏が自己の利益のために不正に会社の資金を支出したためです。検察はその後ゴーン氏を起訴しました。
上記どちらの罪も罰則は重く、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方とされています。
これら罪でゴーン氏は起訴され、裁判所が保釈許可をしました。保釈には条件がいくつかありますが、その条件を破ると保釈が取り消され、保釈金が没収されることがあります。ゴーン氏の保釈金は15億円です。海外逃亡をしたため、その保釈金は没収される見通しとされています。