1月8日、逃亡先のレバノンで、日本司法の不当性を訴えたカルロス・ゴーン被告(提供:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 年末に日本を不法出国し、レバノンに逃れた日産のカルロス・ゴーン前会長は、8日15時(現地時間、日本時間22時)に記者会見を開いた。70分間にわたって、自分の意見を蕩々と述べたが、その目的は半分以上達成できたと思う。

 まず、日本の司法制度の非人道性を逃亡の原因とした。また、金融商品取引法違反や日産の資金を不正に支出した会社法違反(特別背任)などの容疑について、全くのでっち上げであり、不正なことは何もしていないと弁明した。

 そして、この「クーデター」は日産の日本人幹部が行ったものであり、西川廣人社長(当時)の名前などをあげた。その背後に日本政府がいるとしたが、レバノン政府に迷惑がかかるとして、政府高官の名前は挙げなかった。その陰謀を裏付ける具体的な証拠も提示することはなかった。

「日本で死ぬか、脱出するか」

 この会見が提起したのは、第一に日本の司法制度への疑問である。ゴーンは、長期にわたる勾留は、「人質司法」であるとの従来の批判を繰り返し、妻と会うことを禁止するなどの保釈条件が厳し過ぎるとした。このような不公正な日本の司法で裁かれれば、被告側の主張は聞き入れてもらえず、無罪になる可能性はないと判断したという。そして、裁判で争えば、時間が経過するばかりで、自由に行動できる保証はないと考えたため、逃亡する以外の選択肢はなかったという。「日本で死ぬか、脱出するか」、その選択だったと明言した。

 逃亡計画の立案、実行の詳細については明言を避けたが、協力者も逃亡を幇助した責任を問われるので、これは当然である。