2024年4月からトラック運転手など宅配業者の時間外労働が大幅に規制されるようになるので、物流の停滞が懸念されている。いわゆる「2024年問題」だが、中でも大きな足かせになっているのが、宅配便の再配達問題である。国土交通省などがさまざまな再配達削減策を講じているが、その決め手として期待されているのがマンションの宅配ボックスの設置率向上だ。住宅ジャーナリストの山下和之氏がその最新事情をレポートする。
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増加の一途をたどるEC市場、再配達削減の取り組み
EC(電子商取引)の増加に伴い、宅配便を利用する人が増えている。経済産業省のデータによると、【グラフ1】にあるように、EC市場は年率10%近く増えていて、2022年の市場規模は14兆円近くに達している。
ECで購入された荷物の大半が宅配便によって各家庭に届けられているが、その数は実に年間50億個を超えて年々増加の一途をたどっている。
ECを利用する人はDINKS(子供を持たず、夫婦とも職業に従事するライフスタイルを意識的に選択するカップル)やシングルなどが多く、1回の配達で荷物を受け取れないことが多く、再配達がなかなかなくならない。
それが、宅配便ドライバーにとっては大きな負担になっているわけだが、2024年4月から実施される働き方改革に伴う労働時間規制強化によって、宅配便の配達に遅れが生じるのではないかと懸念されている。いわゆる物流の2024年問題だ。
国土交通省の調査によると、新型コロナウイルス感染症拡大で在宅ワークが増えた2020年には再配達が減少して【グラフ2】にあるように10%を切ったものの、その後は再び増加。在宅ワークが減って出社が増えた2021年には10%台に戻り、特に都市部では高い割合が続いている。
国交省は再配達を削減するため、コンビニ受け取り、営業所受け取り、置き配などの利用を促進するなど物流負担の軽減に役立つ受け取り方法を選択した消費者にポイントを還元する実証実験を行っている。だが、どれくらいの効果があるのか、本格導入されることになるのかは実証実験の結果次第で、まだ先行きが見えない。