不動産市場で絶大な人気を誇る都心のタワーマンション。新築分譲価格は1億円超えもザラで、いまや現代版「富の象徴」とも言える状況だ。だが「何か儲かりそう」と安易に飛びつくと、大きな落とし穴が待っていることも。住まいとして、資産としてのタワマンに未来はあるか? 30年以上にわたり業界に身を置く不動産のプロが、タワマンの真実を読み解く。
※本稿は『家が買えない』(牧野知弘著、ハヤカワ新書)より一部抜粋・再編集したものです。
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
エリートサラリーマンは団地を買い求めた
本書では、団地は造成され始めた当時、庶民にとって「憧れ」の住居だったことを紹介している。この団地に近いところが、現代のタワマンにはある。昭和40年代に団地を買い求めたエリートサラリーマンの姿が、現代のパワーカップルなどが「富の象徴」としてタワマンを購入する姿と重なるのだ。
また、戦後の都市圏近郊における住宅ニーズの急増が団地を生み、近年の都心居住ニーズの高まりがタワマンを生んだという、それぞれの時代的な背景があるが、団地が並ぶニュータウンも、タワマンが乱立する湾岸エリアも、ともに社会的な要請に応じて人工造成された街である点に共通項がある。
もちろん、オールドタウン化する郊外ニュータウンに比べて、タワマンが立つエリアは現代の居住ニーズに応えるべく選ばれているため、今は活気がある。先ほどのマンションは立地次第という面でも、とりわけタワマンは価値が高いとされる。
だが、果たして今後もその人気は続くであろうか。