東京・湾岸エリアのタワーマンション群東京・湾岸エリアのタワーマンション群(2015年撮影、写真:共同通信社)

 1990年代から2000年代の初頭、タワーマンションはまだ珍しい時代で、売り出せば即日完売状態が続き、抽選になってなかなか手に入らないことも多かった。資産価値としての評価も高く、価格上昇が続いた。それが、今ではあちこちでタワマンが見られ、希少性も低下しているが、果たして資産価値の高さは今後も維持できるのだろうか──。住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。(JBpress編集部)

>>【グラフ】タワマンの累計棟数、戸数推移、シェアなど

年間30~50棟程度の供給が続くタワマン

 タワーマンションとは、一般的に最高階が20階以上、高さ約60m以上のマンションを指す。わが国では1970年代から供給が始まり、【図表1】にあるように、1990年代からジワジワと増え始め、その後2000年に入ってから急速に増加した。


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 当初は希少性が高く、短時日で完売するケースが多かった。売り出した月中に契約が成立する割合を示す月間契約率が70%なら成功といわれる中で、ほとんどのタワマンが90%以上の契約率を記録。即日完売する物件も珍しくなかった。希少性の高さから資産価値も高く評価され、売却時にも購入価格より高く売れる物件が多く、それが一層人気を高める要因となった。

 人気の要因としては、都心立地が中心だったという事情があるが、2010年代、2020年代に入ると、地価の高騰により都心での用地取得が難しくなり、都心周辺や郊外のターミナル駅などでも建設されるようになった。そして、今や至るところでタワマンが建設されている。

 その結果、タワマンの希少性が次第に薄れてきた。【図表2】は、首都圏におけるマンションの竣工戸数とタワマンの竣工戸数、【図表3】ではマンション全体に占めるタワマンの比率を示している。


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 それを見れば分かるが、1990年代にはタワマンのシェアは極めて小さかった。年によっては6%台、8%台といった年もあったものの、0%台、1%台、2%台の年が中心だった。マンション全体の100戸か50戸に1戸程度の割合にとどまっていたわけだ。

 だからこそ、希少性が高く、タワマンを購入できる人、住める人は周囲から羨望のまなざしで見られ、本人たちも優越感を持って住むことができた。