新築マンションの原価が大幅に上がっている新築マンションの原価が大幅に上がっている(写真はイメージ、aomas/Shutterstock.com)

 新築マンション価格の高騰が続いている。建築資材や職人の人件費の上昇に加え、地価も上がり続けているため、原価アップを価格に転嫁せざるを得ない状況だ。だが、高くなり過ぎると平均的な収入の会社員では手が届かなくなるため、何とか価格を抑制しようとさまざまなレベルで仕様や設備の引き下げが行われつつあるという。新築マンション選びの注意点について、住宅ジャーナリストの山下和之氏がアドバイスする。

新築マンションの原価を押し上げている最大の要因は?

 新築マンションの原価は、大きく分けると①土地の仕入れ価格、②建築費、③分譲会社の経費・利益から成り、その合計を販売戸数で割って、1戸当たりの価格を決定することになる。

 この数年、上記の①~③がいずれも上がり続けており、新築マンションの原価が大きくアップし、それがマンション価格を押し上げてきた。中でも、近年上昇幅が大きいのが建築費だ。

 建設物価調査会のデータによると、【グラフ1】にあるように、マンションの構造の主力である鉄筋コンクリート造の工事原価はこのところ前年同月比で7%前後の上昇となっている。


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 一時は前年同月比5%程度で比較的落ち着いた動きになり、そろそろ建築費の上昇も収束するのではないかと期待されたが、このところ再び前年同月比6%台、7%台の高い上昇率になってきた。2015年を基準値とする指数が最高値を更新し続けているのだ。

 建築資材などに関しては、円安から円高にシフトしていけば、輸入材が安くなるのではないかと期待される面があるが、それより深刻なのが建築現場を支える職人たちの労務費だ。

 残業規制が強化され、世の中では宅配便などの輸送能力が不足する「物流2024年問題」が叫ばれているが、実は建築業界も同様に2024年問題が深刻で、週休2日制の確保、残業時間規制などが徹底されるようになって以降、人材不足とともに労務費も上がり続けている。

【グラフ2】は日本建設業連合会が建設技能労働者の労務単価の上昇率を職種別にまとめたもので、2021年に比べて労務単価は全国全職種単純平均で16%上昇しており、中には20%以上上がっている職種もある。


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 もちろん建設会社にとって労務単価の上昇は大きな負担だが、それはそのまま建築費に上乗せされ、ひいてはマンション価格の押し上げ要因となっている。

 マンション建設に当たるゼネコンは、マンションを開発・分譲するデベロッパーに対して、建築費の値上げを要求し、値上げに応じないと建築を受けられないという強硬な姿勢を強めている。それに対して、何とか建築費を抑えたいデベロッパー側は防戦一方と言われており、当面、建築費上昇の流れは変わりそうにない。