平均専有面積は「3畳」近く狭くなっている

 では、ゼネコンやデベロッパーはどんな手を使うのか。真っ先に挙げられるのが、専有面積の圧縮だ。

 例えば、これまで専有面積70m2の3LDKが5000万円だったエリアでは、原価の上昇を反映させるとすれば、5500万円、6000万円にしなければならない。しかし、5000万円より高く設定すれば消費者の購入可能額を超えてしまい、分譲しても客が来ず、全く売れなくなってしまう。

 だったら、専有面積を65m2に削れば5000万円でも何とか採算がとれるようになるのではないかと考え、70m2の3LDKが、65m2の3LDKへと姿を変えることになる。

 事実、このところの価格上昇の傾向で、新築マンションの専有面積の縮小が続いている。【グラフ3】は首都圏の新築マンションの年次別の平均価格と平均専有面積の推移を示している。

 棒グラフの平均価格は右肩上がりの一方、折れ線グラフの平均専有面積は右肩下がりのカーブを描き、2014年には71.16m2だったものが、2023年には66.10m2と5m2以上も狭くなっている。畳1畳が1.62m2なので、3畳近く狭くなっている計算だ。


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 他にもある。例えば天井高については、居住性などを考えると2.45mから2.50mはほしいところだが、最近は2.40mのマンションが増えつつある。また、断熱性や遮音性を考慮して二重床、二重天井にしていたものをじか貼りにするなどして高さを節約。同じ建築費でも1階分高くして、分譲住戸を増やすことで価格を抑えている物件もある。

 天井が低いと日常的に圧迫感があり、窓も低くなって眺望が開けないという問題も出てくる。また二重床、二重天井ならリフォーム時に水回りの移動も可能だが、そうでないと自由度が低くなるといった問題もある。もちろん遮音性能や断熱性能などにも影響してくる。

 また最近目立つのが、各住戸のドア部分を外廊下から少し後退させたアルコーブを設けるマンションの減少だ。

 アルコーブがあれば、外部から部屋の中が見えにくいので、プライバシーを守りやすく、何より玄関ドアを開けたときに外廊下を歩いている人にドアがぶつかる事故を少なくできる。安全・安心を考えれば、ぜひとも欲しい要素なのだが、専有面積の圧縮傾向の中で、一定の専有面積を確保するために、アルコーブを削除しているわけだ。