居住性や資産価値に大きく影響する「共用部分の仕様引き下げ」

 共用部分でも仕様の引き下げが強まっている。

 リーズナブルな価格帯のマンションであれば、エレベーターから外廊下を通って各住戸がつながっており、プライバシーなどに配慮して外部から見えにくいすりガラスにするなどの配慮が行われるのが普通だが、中には鉄格子で丸見えになる物件もある。鉄格子だと維持管理を徹底しないとさびが目立つようになって、資産評価を大きく損なう要因にもなる。

 外階段についても同じだ。通常はコンクリートで固めた頑丈な造りになっているが、最近は鉄製の外階段も目立つようになってきた。こうした点は外部からも見えるので、中古住宅となったときに、やはり資産価値にも影響してくる。

 エレベーターも50戸から60戸に1基は必要といわれているが、70戸、80戸に1基、なかには100戸に1基といったマンションもある。通勤、通学時などには混雑して時間がかかるので、居住性にも影響してくる。

 このように、建築費の高騰にともなう仕様・設備の引き下げの範囲は広い。全てをチェックするとなるとなかなか大変だが、確認しておかないと契約後や購入後に「こんなはずではなかった」ということになりかねない。

 とはいえ、引き下げをほとんど行っていない物件は少ないので、あまりこだわり過ぎると選択肢が狭くなってしまうかもしれない。

 それだけに、今回挙げたポイントを確認しておき、どこまでなら引き下げを許容できるのか、またはできないのか、家族でよく話し合って物件を決めるようにするのが現実的な対応と言えるだろう。

【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。