老朽化したマンションの建て替えがなかなか進まない要因とは?老朽化したマンションの建て替えがなかなか進まない要因とは?(写真:MildGoto/Shutterstock.com)

 マンションは竣工後の経過年数が長くなるにつれ、次第に老朽化が目立つようになる。そうなると必要な工事が増え、修繕コストもかさんでくる。また、快適性が損なわれるだけではなく、震災など自然災害への不安も高まる。いっそのことマンション自体の建て替えができればいいのだが、それも一筋縄ではいかない。マンション建て替えの実態について、住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。(JBpress編集部)

>>【グラフ】マンションの建て替えに伴う区分所有者の平均負担額は?

築40年超のマンション建て替え成功率は「1%以下」

 鉄筋コンクリート造の建物は物理的には100年を超えても使用できるのではないかと言われている。しかし、会計上、減価償却を計上できる法定耐用年数は47年で、現実には竣工から40年程度が経過すると老朽化が目立つようになり、地震など自然災害への不安が高まると同時に、大規模修繕の費用などがかさむようになってくる。

 それらの問題を解決するのがマンションの建て替えであり、竣工から40年が経過したマンションでは、建て替えが発議され、区分所有者の間で議論が進められることが多い。しかし、ことはそう簡単ではない。さまざまな問題をクリアしなければならないのだ。

 そのため、実際に建て替えに成功しているケースはまだまだ少ないのが現実だ。国土交通省の調査によると、2023年末時点で築40年以上のマンションは140万戸近くに達しているものの、【グラフ1】にあるように、建て替えを実施したマンションは297件にとどまっている。実に1%にも満たない件数だ。


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 国も手をこまねいていたわけではない。2002年には「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」を制定し、民間が主体となって都市の再生を図るため、マンション建て替え組合の設立、権利変換手法による関係権利の円滑な移行などを促進する制度を整備。建て替えを促進する仕組みを提示した。

 しかし、なかなか効果が上がらないため、その後、2014年、2020年に法改正が行われた。①建て替え後の容積率の緩和、②除却の必要性にかかる認定対象の拡充、③容積率の緩和特例の適用対象の拡大──など建て替え環境の整備が進められているが、それでもまだ十分ではない。