余剰床で建て替え費用を捻出できるケースが少なくなっている

 なぜ、マンションの建て替えが進まないのか、さまざまな要因が挙げられる。

 第一には、費用負担が大きいことがある。国土交通省の調査によると、建て替えにあたって、区分所有者が負担する金額は年々高額になっている。【グラフ2】にあるように、2017年以降では平均1941万円で、特に建築費の高騰を受けて2017年~2021年は格段に高くなっている。


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 建て替えにあたっては、不動産会社などが参画して建て替えを推進するのが普通だが、建て替えによって延床面積を増やせるケースであれば、余った床を一般分譲して収入を得て、それを建て替え費用に充てることになる。

 以前は、容積率(敷地面積に対して建築できる延床面積の割合)を余している物件が多く、余剰床が多く発生したが、近年では容積率がギリギリだったり、その後の建築基準法の改正でむしろ容積率が小さくなっていて、建て替えしてもそれまでの延床面積を確保できなかったりするマンションも見られるようになってきた。

 かつては余剰床の売却によって建築費を賄えたため、建て替え後の新築マンションを自己負担なしで取得できるケースが多かった。しかし、最近ではそうしたケースはほとんどなく、一定の負担金が必要になっている。この点がマンションの建て替えがなかなか進まない第二の要因だ。

【グラフ3】でも分かるように、建て替え後の延床面積を100とした場合、1970年代に建て替えられたマンションだと、77の余剰床を生み出すことができたが、近年では30台まで低下している。余剰床の販売によって建て替えに必要な費用を捻出できる可能性が極めて低くなっているわけだ。


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 自分たちのマンションが建っている場所の容積率がどうなっているのか、現状で何%を使っていて、建て替えで延床面積を増やすことができるのかどうかを確認するのが、第一歩になるかもしれない。