(山下 和之:住宅ジャーナリスト)
マンションの建物や設備、居住者・所有者の高齢化が進み、将来的にはスラム化するマンションが増えるのではないかと懸念されている。すでにマンションを所有している人は、自分たちのマンションがそうならないようにしなければならないし、これからマンションの購入を考えている人も、そんな可能性のあるマンションを選択しないように注意しなければならない。
築40年以上のマンションは2041年に425万戸に
国土交通省によると、わが国の分譲マンションストックは2022年末現在約694.3万戸で、そこにおよそ1500万人が住んでいるそうだ。賃貸まで含めれば、人口の2割超がマンション住まいをしている。
大都市部を中心に、マンション暮らしが当たり前になりつつあるわけだが、それに合わせてマンションのさまざまな問題が表面化している。特に、近年よく言われるようになったのが、建物、居住者双方の高齢化、いわゆる「2つの高齢化」問題だ。
【グラフ1】にあるように、2021年段階では、築40年以上が経過したマンションは115.6万戸だが、これが2031年に249.1万戸、2041年には425.4万戸に増加する。
築年数が40年を過ぎると、マンションの老朽化問題がさまざまな形で表面化してくると言われるが、10年後、20年後には日本全国の多くのマンションで老朽化が深刻化し、そこへの対応策が十分取られないと大変なことになりかねない。
そのため、マンションの管理組合やマンション居住者の間でも、老朽化への意識が高まっている。国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、全体では25.8%のマンション管理組合で老朽化対策について議論したことがあるとしており、特に経過年数の長いマンションほどその割合が高くなる。
議論したことがあるマンションで見ると、1974年以前に完成したマンションでは、7割以上で老朽化問題を議論したことがあるとしており、1980年~1984年完成でも半数を超えている。経過年数が長くなると、老朽化がひとごとではなく目前の問題と意識され、対策の必要性が高まってくるのだろう。
しかし、議論をしたことがあるマンションのアンケート結果をみると、「修繕・改修の方向で議論し、具体的な検討をした」とするマンションが43.9%あるものの、検討の結果が実行に発展するかどうかは不明だ。事実、「議論はしたが、具体的な検討をするには至っていない」が43.4%となっていて、現実的な対応策の実施には至っていないマンションも多いのが実情である。