管理会社のほうから委託更新を断るケースも

 そうした老朽化対策が取れないと、最悪の場合、管理会社からも見放されてしまう可能性がある。

 一時は、管理内容に対して委託費用が高すぎるなどの理由から、管理組合が管理会社を差し替える、いわゆる「リプレース」が増えたが、最近では管理会社サイドから「委託費が安すぎて十分な管理ができないうえ、料金の引き上げにも応じてもらえない」と管理委託の更新を断るケースも増えている。

 管理会社にまで見放されてしまうと、マンションの管理体制は崩壊し、建っているだけで居住者や通行人に危害を加える恐れが出てくる。さらに危険な状態にもかかわらず解体できないと、所有者は収入の少ない高齢者だけになり、マンションはいよいよスラム化しかねない。

 マンションがスラム化してしまうと、売却して新しいマンションに移ろうと考えても、思い通りに売却できないので、にっちもさっちもいかなくなり、将来的には相続で子どもたちに負担をかけることにもなる。

 そうならないように、日ごろから管理組合の活動に積極的に参加して老朽化対策を議論しておくことが大切だ。また、中古マンションを探している人も、修繕計画が進まず将来的にスラム化の可能性があるマンションを選ばないといった選択眼が重要になってくるだろう。

【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。