マンション全体の劣化につながる「漏水・雨漏り」

 マンションの老朽化対策が進まない最大の要因が、居住者の高齢化にあるのは間違いないだろう。

【グラフ2】にあるように、2015年以降完成のマンションでは、世帯主の年齢が40歳代までの若い人たちが半数を超えるが、1995年~2004年完成では60歳代以上が半数を超えるようになり、1984年以前に完成したマンションでは、何と70歳代以上が55.9%に達しているのだ。60歳代以上を加えると76.2%に達しており、1984年以前完成のマンションでは、4棟に3棟で世帯主の年齢が60歳代以上となっている。


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 老朽化対策を現実化して、マンションの若返りを行うためには、大規模修繕などが必要であり、時間もお金もかかる。高齢の居住者が増えると、それに対応できなくなり、一層老朽化対策を実施できないケースが増える。

 もちろん、70歳代以上でも十分な年収や資産などがあって、ゆとりある生活を送っている人もいるだろうが、多くは年金生活で家計は決して楽ではないだけに、問題は深刻だ。

 では、実際に老朽化したマンションでは、どんな箇所の修繕が必要になっているのだろうか。【グラフ3】は、マンション全体と1974年以前に完成した築50年以上のマンションについて、修繕が必要となっている箇所について質問した結果を比較したグラフだ。


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 全体として最も多いのは、「外壁や共用廊下のひび割れ」の31.0%で、2位は「その他設備等の劣化・故障」が19.8%、「漏水や雨漏り」が17.1%などとなっている。

 それに対して、1974年以前完成の経過年数の長い、いわゆる築深マンションでは「給排水管の老朽化による漏水」が46.2%と半数近くに増え、次いで「漏水や雨漏り」が37.4%、「外壁や共用廊下のひび割れ」が28.6%などとなっている。特に、経過年数が長くなると漏水のリスクが高まり、それがマンション全体の劣化につながる可能性が高い。

 漏水を防ぐためには、屋上の防水や給排水管の交換工事などが必要になり、それを行えないと各所で漏水事故が発生してしまう。漏水は一部屋だけの問題は済まず、階下の部屋にも影響して損害が拡大する。

 また、長い目でみると、漏水によって水が建物躯体のコンクリートに染み込んで、建物全体の強度が弱まるといった影響も出てきかねない。

 さらに水漏れによって通常の給水が行われなくなり、突然水が出なくなったりすることがあるし、漏水した部屋だけではなく、その隣近所などの居住者も一時的に退去しなければならなくなったりもする。

 そのほか、外壁や共用廊下のひび割れ、外壁等の剥落、屋外階段の腐食・劣化などの影響も大きい。例えば、非常階段の手すりがさび付いていると、歩いている人が手すりを握ったときに手すりが壊れて、歩いている人が転落したり、手すりの落下で、その下にいる人にケガを負わせてしまうことになる。