老朽化した設備、時代に合わない設備は段階的に修繕を

 そんな状態が散見されるようになっても、居住者の高齢化による予算不足などで対応を図れないと、ますます危険な状態になり、マンションから出ていってしまう人も増える。当然ながら、新たに購入を希望する人、賃貸で入居する人を探すにも、そんなマンションではとても入居者の増加は期待できず、空室が増え、管理状態は一層悪化する。

 前出の「令和5年度マンション総合調査」によると、1974年以前に完成したマンションでは、3カ月以上の空室が20%を超えているマンションが2.9%あり、空室が0%超~20%以下のマンションも56.8%に達している。

 空室が増えると、それだけ管理費や修繕積立金の徴収が難しくなり、ますます維持管理状態が悪化し、空室がさらに増加して負のスパイラルが発生、スラム化する可能性がある。ひどいケースでは、空室に勝手に入り込む人たちが出てきて、防犯上の問題になるマンションもある。

 そうならないためには、経過年数がさほど長くならない段階から、住民同士のコミュニケーションを深め、費用を出し合って計画的に修繕を行っていくことが大切だ。あるいは、老朽化が著しくなれば、建て替えを協議したり、取り壊して売却したりするなどの方法も選択肢のひとつだろう。いずれも、決して簡単なことではないが、それができないと自然災害や防犯上の問題などがいよいよ深刻化してしまう。

 まずはできることから段階的に実施していく必要があるだろう。老朽化した箇所や時代に合わなくなっている設備などについて段階的に修繕を進め、できるだけ売却しやすくすれば次の購入者、入居者が現れやすくする。

 老朽化マンションでは、修繕費用が不足しているマンションがほとんどだろうから、一度に全てを解決するのは困難だ。できるところから段階的に、しかし着実に実行していくことが大切である。

 例えば、インターネット回線が古くなっていれば新しくしたり、インターフォンにモニターがついていなければ導入する。また、宅配ボックスがない、少ない場合には設置または増設するなど比較的低予算でできることから始めてはどうだろうか。

 また、入居者の高齢化が進んでいるマンションであれば、共用部のバリアフリー化が急務だ。エントランスや共用廊下の段差を解消するといった工事であれば、さほど費用はかからない。