東京BRTの車両晴海BRTターミナルに停車中の東京BRTの車両(筆者撮影)

バス高速輸送システムの「BRT」とは?

 東京の湾岸部を走る「東京BRT」が、2月1日から選手村ルートの運行を開始する。

 この新ルートは、東京五輪で利用された選手村跡地に建つ大規模マンション「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」のある晴海五丁目地区へ乗り入れるルートで、これまで運行されてきた幹線ルートや晴海・豊洲ルートでもダイヤを改正して同エリアをルートに組み込む。

 東京BRTのBRTとはバス・ラピッド・トランジット(=bus rapid transit)の略称で、日本では一般的に「バス高速輸送システム」と訳される。

 2012年の東日本大震災で被災した岩手県・宮城県を走る大船渡線や気仙沼線は、再建後の採算面が考慮され、鉄道での復旧ではなく一部区間をBRTに転換した。また、2017年に豪雨災害によって被災した福岡県と大分県を走る日田彦山線も一部区間を鉄道からBRTに転換して復旧している。

東日本大震災で被災した大船渡線と気仙沼線は、一部区間をBRTへと転換(筆者撮影)

 こうした災害によって損壊した鉄道を復旧させる手段としてBRTが用いられるケースが目立つが、茨城県日立市では利用者が少ないことから2005年に廃線になった日立電鉄の跡地を活用する形でBRTを整備している。

ひたちBRTひたちBRTは日立電鉄の廃線跡を整備して運行を開始(筆者撮影)

 一方、東京BRTは、被災した鉄道路線を転換したものではなく、廃線跡を活用したケースでもない。どちらのケースとも異なる、新しい公共交通として導入された。その背景には、東京都が開発を推進する湾岸エリアの複雑な事情があった。

東京BRT2020年10月に開業した東京BRT(写真:共同通信社)