「快速」という列車種別が編み出された経緯

 鉄道のダイヤ改正は通勤・通学といった生活環境を大きく左右する出来事だが、普段は注目されることが少ない。ところが、昨年12月にJR東日本千葉支社が発表したダイヤ改正が大きな波紋を呼び、テレビ・新聞・ネットなど各種メディアでも盛んに取り上げられている。

 JR東日本千葉支社は2024年3月に実施予定のダイヤ改正において、京葉線で運行していた通勤快速を廃止し、同時に快速の運転もデータイムのみにするとした。

 京葉線は東京駅―蘇我駅間を結ぶ約43.0kmの路線のほか、市川塩浜駅―西船橋駅間の支線が約5.9km、同じく西船橋駅―南船橋駅間の支線が約5.4kmという路線。今回、大きな注目を集めた通勤快速は東京駅―蘇我駅間を走る列車で、内房線・外房線にも直通する。

JR京葉線荒川橋梁JR京葉線荒川橋梁(写真:SUSUMU AOYAMA/a.collectionRF/アマナイメージズ/共同通信イメージズ

 東京方面へと向かう京葉線の通勤快速は、蘇我駅を出発すると次の停車駅は新木場駅となる。幕張新都心が駅前に広がる海浜幕張駅や2000年代後半からタワーマンションが多く建つ新浦安駅、ディズニーリゾートの玄関駅となっている舞浜駅には停車しない。文字通り多くの駅をすっ飛ばす通勤快速は、かなり大胆な停車駅設定だといえる。

 従来、こうした主要駅のみに停車するのは特急や急行といった列車の役割だった。旧国鉄で特急や急行に乗車するには、運賃のほかに特急料金もしくは急行料金と呼ばれる乗車料金を必要とした。そして、JRでも特急・急行料金は引き継がれた。

 東京・名古屋・大阪・福岡といった都市圏では、JRと私鉄が競合している区間は少なくない。JRが特急・急行料金を課せば、割安な私鉄に利用者が流れてしまう。そこで、並行する私鉄から利用客を奪うための手段として、特急・急行料金を必要としない「快速」という列車種別が編み出される。

 1987年にJRが発足すると、国鉄の赤字体質を改善することが求められた。特に大都市圏を抱えるJR東日本・東海・西日本は収益改善への期待が大きかった。3社は収入を増やすための取り組みとして、通勤圏の拡大に力を入れることになる。なぜなら、通勤圏を拡大させれば鉄道需要は必然的に増大するからだ。

 こうしてJR各社は通勤圏を拡大するべく、運賃のみで乗車できる快速列車を増やしていく。しかも、単なる快速ではなく新快速・特別快速・通勤快速といった具合に多くの種類が生み出された。そこまでJRが通勤圏の拡大に力を入れたのも、通勤客は安定的な需要が見込めることが大きい。