ライトラインの沿線には、ホンダをはじめ大企業の研究所や工場が多く立ち並んでいる(筆者撮影)

 2023年8月26日、栃木県宇都宮市と芳賀町を結ぶ新しい路面電車として開業した「ライトライン」。利用者数は当初の予測を上回り、開業から162日目で累計200万人を突破した。高度経済成長期にマイカーの波に押されて次々と廃止された路面電車だが、なぜ再び脚光を浴びているのか──。ライトライン成功の要因と今後の展望について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。(JBpress編集部)

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当初はさまざまな公共交通を検討していた栃木県・宇都宮市

 栃木県宇都宮市と芳賀町を走る新型路面電車の「ライトライン」が、2024年2月3日に累計利用者数200万人を突破した。200万人の突破は開業から162日で達成し、当初の予測を上回っている。

 ちなみに、新しい路面電車は開業した後も名称が定まっていなかった。駅や地図などの案内でも「宇都宮ライトレール」「芳賀宇都宮LRT」「ライトライン」と呼称が統一されていなかったことが市議会でも取り上げられ、ライトラインへと呼称を統一していく方針となった。

 ライトラインは新型路面電車やLRT(ライト・レール・トランジット)と説明されることが多いが、その背景には、高度経済成長期まで全国各地で走っていた路面電車とは異なることを強調させる目的があると考えられる。

 昭和期に全国で走っていた路面電車はマイカーの普及に伴って見放されるようになり、姿を消していった。そんな古いイメージで語られがちな路面電車が再び脚光を浴びているのは、公共交通の整備が都市の発展や持続・維持に欠かせないことが明確になりつつあるからだ。

 もっとも、公共交通という枠組みだったら、路面電車にこだわる必要はない。路線バスでもいいし、近年になって各地で導入が相次ぐBRT(バス・ラピッド・トランジット)のほうが安上がりに導入できる。また、路線バスやBRTより建設費は高くなるが、モノレールなどの新交通システムにしてもよかったはずだ。

 栃木県や宇都宮市も、当初から新型路面電車の導入を決めていたわけではない。さまざまな公共交通を検討し、最終的に新しい路面電車を選択した。では、なぜ栃木県や宇都宮市・芳賀町は新しい路面電車を敷設しなければならなかったのか。

 昨今、新型路面電車はLRTと呼ばれて多くの都市で導入が進められているため、宇都宮市・芳賀町がその流れに乗ったことは間違いないだろうが、新型路面電車の導入は栃木県や宇都宮市・芳賀町が抱える「交通渋滞の解消」という深刻な行政課題に対処するための手段でもあった。

高架線を走るライトライン(筆者撮影)