「青春18きっぷ」は、JR全線の快速列車や各駅列車の自由席が乗り放題になるお得なきっぷだが、そんな青春18きっぷでの旅を新入社員の研修に取り入れた企業がある。島根県出雲市に本社を置く山陰パナソニックだ。そこにはどのような狙いがあったのか? 2年間にわたる取り組みを紹介する。
>>【写真】「サンパナポーズ」で写真を撮る山陰パナソニックの新入社員ほか
社長の発案がきっかけで始まった18きっぷの新入社員研修
昨今、企業はどこも慢性的な人手不足と言われるが、どの企業も誰でもいいから採用したいとは考えていない。新卒・中途採用ともに厳格な選考が実施されている。
昭和期は終身雇用の意識が強かったが、平成期以降は転職・離職も珍しくなくなった。特に入社から3年以内に離職する新卒者も目立つようになり、せっかく育てた人材が流出する事態に企業は頭を悩ませている。
そこで、新入社員にじっくりと向き合うことで離職率を下げようとする企業がある。島根県や鳥取県に営業所を構える山陰パナソニック(本社・島根県出雲市)だ。
同社が「青春18きっぷ(以下、18きっぷ)」を使った新入社員研修を初めて実施したのは、2022年12月のことだった。人財戦略部の船井亜由美さんが、その経緯について語る。
「18きっぷの旅を新入社員の研修に導入したのは、社長の渡部(幸太郎)からの発案がきっかけでした。社長は採用面接時に学生から『内定から入社までの間、自分を磨くために何をしたらいいのでしょうか?』と質問されることが多かったのです。
弊社の社長は以前から旅好きで、旅を通じた経験が社会人になってからも役に立つと考えていたのです。そうした経緯から、『旅をしたらいいんじゃないか』と答えていました。これが新入社員研修で18きっぷの旅を始める糸口になりました」
船井さんも18きっぷを使って日本各地を旅した経験があり、社長の提案に賛同した。ここから新入社員研修の新たな取り組みの検討が始まった。