東日本大震災で被災した大船渡線では復旧手段としてBRTが導入された(写真:池口英司、撮影は2013年)

 国土交通省の有識者会議が、利用者が少ない鉄道のローカル線について、自治体や事業者など関係者が運行見直しを協議する枠組みの創設を提案した。抜本的な対応を迫られる赤字ローカル線の代替手段のひとつとして挙がるのがバス高速輸送システム(BRT)だ。

 専用道路を作ってその上にバスを走らせ、バスが不得手な定時運行を可能にするというのがその基本的なスタイルで、日本でもすでに複数の路線が開業している。特に少量の輸送には好適と目されることから、地方の公共交通の主役となる可能性を備えているが、残念なことに、近年はその発展がひどく緩やかなものになっている。BRTの可能性、そして課題はどこにあるのだろうか。

(池口 英司:鉄道ライター・カメラマン)

専用道路を走り定時運行が可能なBRT

 衰退が続いている全国のローカル線を代替する交通機関としてBRT(Bus Rapid Transit=バス高速輸送システム)が注目されるようになった。交通に興味がある人であれば、きっとその名を聞いたことがあるだろう。

 基本的な考え方は、他の車両が走ることのない専用の道路を作り、その上にバスを走らせるというものである。乗用車と同じ道の上を走る路線バスは渋滞によって遅延が生じることが常態化しており、バスの大きな弱点となっている。

 それに対しBRTでは、専用道路を作って他の乗り物をシャットアウトすることによって渋滞などの影響を受けず、鉄道と同様の定時運行が可能になる。

 いつもの時間に駅に行けば、時間どおりに列車がやって来るというのが鉄道の大きな強みだが、専用道路を持つBRTであれば、鉄道と同様の時間に正確な運転が可能になるというわけだ。

 世界で初めてのBRTは、1974(昭和49)年にブラジル南部のパラナ州の州都・クリチバで開業したものとされるから、もう相応の歴史がある。

 日本でもかつて福島県に存在した国鉄白棚線(はくほうせん)が、1944(昭和19)年12月に運行を休止し、戦後、線路跡を使用して代行バスの運転を開始した。当時はBRTという言葉はなかったが、これが日本における初めての事例とされている。