第4世代エクストレイル。日本ではハイブリッド専用車となった

(井元康一郎:自動車ジャーナリスト)

“ゴーンショック”を境に苦境に陥っていた日産自動車が今年に入って攻勢に出ている。1月に中型SUVのBEV(バッテリー電気自動車)「アリア」、6月に軽自動車のBEV「サクラ」、そして7月25日には中型SUVの第4世代「エクストレイル」を発売。昭和~平成初期に比べてクルマの新商品発表数が激減している中、半年で大物商品三連発は珍しい。

6月にデビューを果たした軽BEVのサクラ。軽自動車は電動化時代を生き残れないという一部の見方を早くも商品で払拭した格好

エコカーとしては物足りない「新型エクストレイル」のスペック

 その中で今回は、三連発のトリを務めたエクストレイルに注目してみたい。この新型エクストレイルは前の2モデルと異なり外部電源からの充電ができないハイブリッドカーである。クルマ自体は2020年に北米で「ローグ」の名で発売されていたもので、新味はない。日産はその日本仕様を小型SUV「キックス」、サブコンパクト乗用車「ノート」に続きハイブリッド専用モデルとした。

ハイブリッド専用車となった現行の第2世代ノート(撮影:筆者)

 エンジンを発電のみに使い、100%電気モーターで走行するシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」に加え、4輪の駆動力を独立制御することで走りの性能を高める新タイプの電動AWD(4輪駆動)システム「e-4ORCE(イーフォース)」を新搭載。最高出力はFWD(前輪駆動)、AWDとも150kW(204ps)と強力だ。

第4世代エクストレイル。前204馬力、後136馬力の強力な電動4輪駆動システムを備える

 まさに商品力向上のためにあらゆる努力を払ったという感があるが、外部電源からの充電ができない以上、ハイブリッドはあくまで燃料の消費量を減らすための技術でしかない。そこはクリーンエネルギー由来の電力を使えばいくらでもCO2排出量を下げられるアリア、サクラと決定的に異なるポイントだ。

 エコカーとしてのエクストレイルのスペックは、中型SUVのハイブリッドカーとしてはトップランナーというわけではない。AWD同士で現在の排出ガス・燃費審査値であるWLTCモード燃費を比較すると、トヨタ「RAV4」の20.6km/l(リットル)、ホンダ「CR-V」の20.2km/lに対し、18.4km/lにとどまる。

 そうなる理由は日産のe-POWERがエンジンを発電のみに使うことに起因していると考えられる。エンジンは常に発電を行うのが最も高効率というわけではなく、状況によってはエンジンパワーを電力変換せずそのまま走行に用いたほうがいい場合もある。

 トヨタのハイブリッドシステムはエンジンパワーを発電と直接駆動に無段階に振り分けられる仕組み、ホンダは一定以上の速度での巡航時や緩やかな加速時にエンジンパワーを直接駆動に使える仕組みを持っている。エンジンでの直接駆動に有利なときまで発電しかできないのは、e-POWERの弱点と言える。

第4世代エクストレイルのインテリア