ホンダの第2世代「ヴェゼル」

(井元康一郎:自動車ジャーナリスト)

ヴェゼルでターゲットにした「ジェネレーションC」とは?

 近年、マーケティングでよく使われるキーワードにZ世代というものがある。1990年代半ば以降に生まれ、生まれた時から情報端末が身近に存在した世代のことだ。

 自動車業界では商品づくりから販売方法まで、このZ世代を巡るユーザー争奪戦が激化している。少子高齢化が進行する今後、クルマを買う人の絶対数は間違いなく減っていく。若年層を取り込めなければその少ないパイの奪い合いに負け、退場するしかなくなる。それだけに各社とも真剣だ。

 Z世代の取り込みを標榜したモデルのひとつに、ホンダが昨年発売したSUV、第2世代「ヴェゼル」がある。メディア向け新商品発表の席で開発陣が強調していたのは、「ジェネレーションCの生活をアンプアップするクルマ」というコンセプトだった。

 その場にいた筆者、キャッチフレーズを耳にした当初は「何のこっちゃ?」とチンプンカンプンだった。ジェネレーションCとはZ世代においてトレンドのけん引役になるような人々のことを指す言葉らしい。Create(何かを創造している)、Curate(情報を精査しまとめる)、Connect(多くの人とつながる)、Communicate(常時コミュニケーションを取る)の4つのCを備える人物、昔風に言えば“目利き”といったところか。

 ジェネレーションCの歓心を買えればZ世代全体にポジティブな情報が伝わり、集客につながるというマーケティングはかなり以前から存在したそうだが、10年前から時が経ち、彼らがクルマの購買層になりつつある今、自動車メーカーがそこをターゲットにするのは自然な流れと言えよう。

 だが、たとえばモノ消費とコト消費、ミレニアル世代といった言葉がそうであったように、マーケティング会社が作ったキーワードは定義がはっきりしない“雰囲気モノ”が多い。果たしてホンダはZ世代、ジェネレーションCをどのように解釈し、クルマ作りにどう反映させたのか。ヴェゼルの上位グレード「PLaY」で東京~鹿児島間を約3600kmドライブし、その道中で特質を検証してみた。