(歴史家:乃至政彦)

ドラゴンクエストIIIの冒険期間

 11月14日に発売される『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以後「ドラクエ3」と短縮して称する)のリメイク作品を楽しみにしている人は多い。私も仕事の合間にちびちびとやらせてもらうつもりでいる。

 どれぐらいの期間冒険にのめり込むかは、個人差があると思うが、今回は中世(ドラクエ3の世界は古代だろうが)の旅行者たちの移動時間などを参考に、われわれプレイヤーではなく、ゲーム世界のキャラクターたちの冒険期間を想像してみたい。

 テーマは「勇者は何日、もしくは何年かけて大魔王を討伐したか?」である。

勇者たちの移動時間

 早速サンプルとして、ドラクエ3のジパングを見てみよう。そこには卑弥呼のいるジパングの都と、やまたのおろちが隠れている洞窟がある。ジパングの都は位置的に奈良県あたりにあるように見える。そこから関東北部にあるらしい洞窟までは、わずか2歩で移動できる。

 ところでこのゲームには時間の概念がある。勇者たちが旅を続けていると、昼から夜に、夜から昼に変わっていくのだ。

 それは勇者たちの歩数で変化していく。インターネット情報によると、朝から夜まで140歩、夜から朝まで96歩の移動が必要で、1日は236歩という計算になる。10歩で1時間ぐらいになろうか。

 もちろんこれは現実的ではない。この世界のジパング本州は、現在の青森県から山口県まで1400キロメートルほどもあろうところを、わずか8歩で移動できる。

 参考までに、16世紀末の豊臣秀吉・秀頼時代に日本を訪れた朝鮮人文官の記録を見てみよう(『看羊録』)。

 関東から倭京(京都)に至るには、遠い地は二十日の日程は下らず、近い地でも一五日はついやす

 京都から関東まで、2〜3週間ほどはかかると言っているのだ。これを勇者たちはたった2歩で移動する(20〜30分程度だろう)。

 そして、青森県から山口県までは、時速1400キロメートル相当の速度で移動できる。

 新幹線や飛行機の、レベルではない。日本から見た地球の回転速度がこの1400キロメートルである。

 中世の人間の移動距離は、1日に30キロメートル前後というのに、これはさすがにむちゃくちゃ過ぎないか。

 ここでこの問題を強引に解釈する仮説をふたつ立ててみよう。