
自宅を売却後も貸借してそのまま住める「リースバック」という仕組みがあるが、今このリースバックを巡るトラブルが急増している。高齢者の被害者が多いため、離れて住んでいる家族が定期的にコンタクトを取って注意しておく必要がある。では、実際にどんなトラブルが多く、どう対処すればいいのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏がアドバイスする。
>>【グラフ】リースバックを行っている事業者の買取価格は?(周辺相場に対する割合)
リースバックのトラブル相談は4年で10倍以上に増加
「リースバック」とは、所有している住宅を売却して現金を得て、売却後も賃貸住宅として賃料を支払うことで引き続き住み続けられるサービスのことである。老後の生活資金やレジャー資金、または有料老人ホームに入る資金などが得られるため、特に高齢者の利用が多い。
例えば、いま住んでいる住宅が段差や階段などもあって住みにくくなっているので、高齢者施設への入居を申し込んだが、空きがなく待機する必要が生じたためリースバックを利用。自宅に住み続けながら、施設入所を待つことにしたというケースがある。
また、両親が住んでいる実家を建て替えて同居することにしたが、建て替え期間中に仮住まいの費用負担がかかるため、自宅を売却して資金を捻出できるリースバックを利用することにしたケースもある。自宅の売却代金は新居の建築資金に充てながら、建て替えまで1年間の賃貸借契約を結んだという。
このように、リースバックは慣れた自宅に住み続けながら売却代金を一括で受け取れる点や、売却によって所有ではなくなるので、固定資産税の負担がなくなるといったメリットもある。
だが、いいことばかりではない。【グラフ1】にあるように、国民生活センターなどの資料をもとに国土交通省がまとめた集計では、トラブルなどを巡る相談が急増しているという。2019年度には19件だったものが2023年度には227件と、実に10倍以上になっているのだ。

事態を重くみた国交省では、「住宅のリースバックに関するガイドブック」を作成するなどして、消費者に周知を図ると同時に、トラブルが発生した場合の対処方法などを紹介している。