リースバックがクーリングオフの対象にならない理由
契約に納得がいかない場合や、訪問販売によって契約した場合であれば、一定条件のもとで契約を解除できるクーリングオフ制度があるが、リースバックには適用されない。
なぜなら、クーリングオフというのは、基本的には買い手を保護する制度だが、リースバックでは消費者が売り手であり、リースバック業者が買い手になる。だから、売り手である消費者は、クーリングオフの対象にはならないわけだ。
にもかかわらず、クーリングオフ制度があるから安心と安易に契約してしまうケースがある。もちろん業者としては、リースバックはクーリングオフの対象にならないことを契約時に説明しておく必要があるが、前出の国交省調査では、「必ず説明している」は55%で、「説明していない」が22%、「積極的に説明はしていないが、質問された場合には説明している」が22%と、およそ半数の業者が説明不足という結果が出た。
日本は今後ますます高齢化が進み、空き家問題が大きな社会課題となるのは間違いない。リースバックは上手に活用すれば、それらの課題を解決する有力な手段になり得る仕組みだけに、トラブルなどを発生させずに市場に定着させていく必要があるだろう。
不動産業界では、リースバックに関心を示す事業者が少なくなく、新たに参入する事業者もますます増えるだろう。中には巧妙な手口を使う悪質事業者が出てくる可能性もあるので、消費者としても、しっかりとリースバックについての知識を持ち、賢く制度を利用したいところだ。
【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。