離婚後に父母双方の親権を認める「共同親権」について議論が進むが…(写真:hachiware/イメージマート)

 離婚後にも父母双方の親権を認める「共同親権」を選べるようにする民法改正の要綱がまとまり、政府は要綱を基にした法案を今国会に提出する見通しだ。父母の協議で単独親権か共同親権か折り合えなければ家庭裁判所が判断するが、共同親権導入について「父母間の葛藤にさらされる子への影響が大きい」と反対する意見も少なくない。要綱には子の意見尊重が触れられておらず、子が親の「操り人形」になる懸念が残る。

(長竹 孝夫:ジャーナリスト)

戦前の民法は原則として父親に親権

 そもそも親権とは何だろう?

 子どもの利益のために監督、教育を行ったり、子の財産を管理したりする権利や義務のことである。つまり親権は子どもの利益のために行使する。父母の婚姻中は、現行の父母双方が親権者で、共同して行使するとされている。

 現行の民法では、父母が離婚する場合、父母のどちらか一方が親権者と定めることとされ、その者が親権を行使する。父母のどちらが決定するのが子どもの利益となるのか、この観点からしっかり話し合う必要がある。協議できない場合は調停や裁判によって離婚、その手続きの中で定めるとされている。

 親権者の歴史を振り返ると、戦前の民法は父母が結婚しているかどうかにかかわらず、原則として父親と定めていた。1947年の法改正で、現在の制度となった。これは離婚した父母が共同で子に関係することを決めるのは「事実上不可能」と考えられたからだ。

 民法は、離婚後の子の世話や教育をどちらが担うか、別居親と子が会う頻度、養育費の分担などを父母が話し合いで決めるよう定めている。「共同養育」は現行法でも可能だ。

2011年の民法改正の付帯決議で共同親権の検討が盛り込まれる

 なぜ日本で「共同親権」の議論が浮上してきたのか。

 離婚後の養育費の分担などを決めるよう定めた2011年の民法改正時、国会の付帯決議に離婚後の共同親権の可能性を含めた検討が盛り込まれたのが発端である。離婚後の協議が円満に進まず、子に会えないなどの不満を持つ親の中には父母がともに親権を持ち続ける制度を望む声もあったとされている。

離婚後、子どもとの面会交流をどうするかで父母が対立することも。写真はイメージ(写真:yamasan/イメージマート)

 海外では、親権についてどう定めているのか。