- 2023年の出生数(速報値)は8年連続の減少で75.8万人と過去最少となった。
- 経済アナリストの森永康平氏は「岸田首相は2030年までが(少子化トレンド反転の)ラストチャンスと発言しているが、これまで出てきた政策は的外れ」と指摘する。
- 「ITで人口減社会に対応」「移民受け入れ」という選択肢はナンセンスで、出生数減の本質である「未婚者の急増」を解決すべく積極財政に今すぐシフトすべきだと説く。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
今すぐ未婚の若者の手取りを増やせ
──2023年の出生数が過去最低でした。この数字をどのように分析していますか。
森永康平氏(以下、敬称略):岸田首相が「2030年までが少子化反転のラストチャンスだ」と発言している通り、75.8万人という数字は危機的な水準だと思います。もっとも、少子化は先進国共通の問題であることも事実。日本固有の問題は「(他先進国と比較すると)出生数の減り方が急である」ことと「結婚の意思がある男女の割合そのものは変わっていない」ことにあります。
少子化の本質は「未婚者の急増」です。結婚と出産、子育てが直結している日本では、結婚するカップルが増えないと、子どもの数も増えようがないのです。
出産適齢期世代が「結婚したくない」と自分の意思で思っているかといえば、案外そんなこともないのです。2021年の出生動向基本調査によれば「いずれ結婚するつもり」と考えている18〜34歳において男性は81.4%、女性は84.3%いました。多少減少しているとはいえ、今も8割の若者が結婚したいとは思っているのです。
にもかかわらず、彼らが結婚できないでいるのは、①所得が上がらない・不安定だ、②税負担が重い、という経済的なものがメインです。
政府もこんな簡単なロジックは理解しているのです。現に、内閣府の「少子化対策大綱」においても「若者の雇用の安定」を掲げています。ところが、実際に出てきた政策は「現役世代の財布から毎月500円頂戴します」「3人目の大学進学を無償化します」というすでに子どもがいる世帯に向けたもの。どこが異次元の少子化対策なのか、開いた口が塞がりませんよ。
結婚したい若者を結婚させるには、彼らの手取りを増やすしかないでしょう。その上で取り組むべきは「減税」に他なりません。特にボディブローのように効いている社会保険料と消費税は早急に見直すべきです。賛否両論あるかもしれませんが、他にも、現金給付などの方法もあります。とにかく、手をこまねいている場合ではないのです。
──この手の話をすると、必ず「財源はどこから持ってくるのだ」という批判があります。