岸田首相の少子化対策は「そこじゃない!」感が満載(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 「子ども3人で大学無償化」…。岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」で出てきた案がまた一つ、「そこじゃない!」と批判にさらされている。
  • 打ち出す対策がことごとく的外れなのは、子どもを産んだ後の「子育て支援策」ばかりで、「出産増」につながりにくいからだ。
  • 子どもが減っている背景には、20代の税・社会保障の負担が増えて経済不安が高まったことによる婚姻数の減少がある。将来に前向きになり、結婚し子どもを産める経済環境の整備が急務だ。(JBpress)

(荒川和久:独身研究家)

 岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げたのは、2023年の正月早々だった。かれこれ1年経つが、次々と政策として提示される案は「そこじゃない」とツッコミたくなるほど的外れなものばかりだった。いまだに何が「異次元」だったのか全くわからない上に、むしろこれは「少子化対策」ではなく「少子化促進対策」だったのではないのかと疑いたくもなる。

 最近、話題にのぼった「多子世帯の大学の入学料や授業料を無償化」という案についても、子どもが3人いれば、第1子から無条件に無償になるものではなく、たとえ3人産んだとしても、扶養の子が3人でないと成立しないという「第3子カウントマジック」が適用されるとのことで、ネットなどでは非難が殺到している。

(写真:アフロ)

 そもそも、これがあるから「もう1人、今から産もう」などとは考えられない。なぜなら、今から産まれてくる子が大学生になる18年後まで、この制度が存続している保証などないからである。

 もちろん、大学などの進学に関わるコストは決して安いものではなく、無償化されれば助かる家族もいるだろう。そういう意味では子育て世帯への支援であることは間違いない。しかし、そもそも「これは少子化対策なのか?」という疑問が頭をよぎる。 

荒川 和久(あらかわ・かずひさ) 独身研究家
広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

 ご存じの通り、毎年出生数は減り続け、2022年は約77万人となった。これは統計をさかのぼってみても明治6年の出生数よりも少ない。つまり、令和の現代はほぼ江戸時代並みの出生力しかないということなのである。

 少子化対策というのであれば、この減り続けている出生数の減少に歯止めをかけるものである必要がある。しかし、政府の言う少子化対策は、そのことごとくが「子育て支援」であり、新たな出生増につながるようなものは何一つ提示されていないと言っていい。

 誤解のないように断っておくが、「子育て支援」を否定するものではない。それはそれとして、むしろ少子化があろうとなかろうと取り組むべきものである。が、「子育て支援」をいくら充実させたからといって、それが出生増には結びつかないというのは、少子化担当大臣が誕生した2007年以来の出生数の推移を見ても明らかである。ちなみに、2007年の出生数は約109万人である。