岸田首相は「異次元の少子化対策」とぶち上げたが・・・(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)岸田首相は「異次元の少子化対策」とぶち上げたが・・・(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」。年間3兆5000億円規模の財源が必要で、実質的な増税が懸念される。現役世代からのブーイングが止まらない。
  • 「児童手当の拡充」などがその柱だが効果は期待できそうにない。少子化の本質は「結婚をしたくてもできない不本意未婚」男女が多いことだ。男性の5割、女性の4割にも上る。
  • 恋愛強者はわずか3割。職場恋愛が盛んな時代は「普通の人」でも結婚のチャンスは多かったが、いまでは手を出せば「セクハラ」で訴えられる。独身研究家の荒川和久氏に、少子化のソリューションを聞いた。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

子育て支援≠出生数増 

──岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」が的ハズレなのはなぜでしょう。

荒川和久氏(以下、敬称略):子育て支援と少子化対策は別物です。子育て支援それ自体は否定しませんが、少子化対策という名の下での子育て支援ばかりに集中しすぎていて、少子化(出生数減)の真の原因である「少母化」と「未婚化」の解決につながるような政策を用意できていないからです。

荒川 和久(あらかわ・かずひさ) 独身研究家
広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

 まず少母化から見ていきましょう。少母化とは、母親になる、つまり子どもを出産する女性の絶対数が減っていることを指します。出生のほぼ9割は15〜39歳の女性が占めますが、1985年には1人以上出産した母親の数が約1060万人いたのに対し、2020年には約6割も減少しています(出所:国勢調査)。

 なぜ「お母さん」の数が減っているのか。それは、だだでさえ出産対象年齢の人口が減少している上に、未婚化で婚姻も減少したからです。2010年の婚姻数は約70万組でしたが、2022年の婚姻数は約50万組と10年で約20万組減っています。

(写真:アフロ)

「異次元の少子化対策」を含め、少子化を防ぐためには「子育て世帯に金銭的インセンティブを与えることが重要」だという説がまことしやかに語られますが、これでは出生数は増えないことは今までの少子化対策の歴史が証明しています。婚姻数が増えなければ出生数は増えないのです。

 私が独自に試算した「1婚姻あたりの出生数」である「発生結婚出生数」という指標がありますが、1990年代から2022年まで30年以上変わらず1.5人〜1.6人を推移しています。つまり、婚姻が1つ減れば、1.5人の出生が失われることを意味します。

 ちなみに私自身は、非婚者が増えていること自体が必ずしも問題だとは考えていません。積極的に結婚しないと決めた「選択的非婚者」もいるからです。問題があるとすれば、「結婚したいのに結婚できない」という「不本意未婚者」が増えていることでしょう。

 出生動向基本調査に基づき、「1年以内に結婚したい」「理想の相手がいたら結婚したい」と答えた20〜34歳の若年層が5年後に実際に結婚できたかどうかを算出しました。1990〜1994年には男性は80%、女性は98%結婚していましたが、2015〜2019年はなんと男性は51%、女性は56%しか結婚できていませんでした。つまり、男性は約5割、女性の約4割が「結婚したくてもできない」状況にあるのです。

──なぜ結婚したいのに結婚できない若者が増えているのでしょうか。