真夏に革ジャンを着ていたカズオさんだったが……(写真:アフロ) ※写真はイメージです

 おじさんの恋は気持ち悪い。そして切ない。

 少子化・高齢化・晩婚化ニッポン。迫りくる老い、平凡でストレス過多の日常、そんなおじさんの心に舞い降りた恋は、果たして地獄か楽園か。さまざまな中高年男子の恋模様を通して、人生100年時代の恋について考えてみよう。

(若月 澪子:フリーライター)

真夏に革ジャンのおじさん

 今「離婚」で最もアツいのは、結婚して20年以上の夫婦の離婚である。

 データを見ても、結婚20年未満の離婚の件数は、40年前と大きく変わっていない。それに対し、結婚20年以上の離婚は、40年前のおよそ4倍、離婚全体のおよそ2割を占めている。

 そもそも日本の夫婦の多くは、男性の「寂しい」と女性の「生活できない」のギブ&テイクで成立している。夫のDV、モラハラ、浮気、借金、実家偏重などによる妻の「もう我慢できない」が「生活できない」の臨界点を超えると、両者は決裂する。

令和4年度 離婚に関する統計の概況(厚生労働省)
年次別にみた同居期間別離婚件数及び百分率並びに平均同居期間(独立行政法人統計センター)

 女性はパートナーがいなくても平気だが、男性はパートナーを失うと寿命も短くなるというのはよく聞く話。

「50代、バツイチ。暇です。寂しいです」

「お友達募集」というようなネットの掲示板をのぞくと、家庭から放り出された中高年男性の漂流が目につく。試しにこうしたおじさんに取材を申し込むと、「すぐに会いたい」「付き合って下さい」との返事ばかり。ピラニアみたいで危険過ぎる……。

 捨てられた中高年男性の再浮上は、難しいものなのだろうか。

 筆者が中高年バツイチ男性のカズオさん(仮名、当時50歳)と知り合ったのは今から10年ほど前のこと。そのころ、筆者は借金苦にあえぐ人たちを取材していて、彼もその一人だった。

 医療法人の職員という固い仕事をしながらも、取材当時500万円の借金を背負っていたカズオさんは、90キロはある太めの体形で、夏だというのになぜか黒い革ジャンを羽織り、うつむき加減で話すと頭皮の薄さがあらわになるという、いろいろ残念なおじさん。

 自分のワガママで妻にも去られており、「借金を抱える人」にありがちな波乱万丈な人生を送る人だった。