- 2019年に合計特殊出生率2.95を記録し「奇跡の町」と呼ばれる、岡山県奈義町。2002年に「町存続の危機」を訴えてから徹底した子育て支援策を実施してきた。
- その過程では、「なぜ我々のカネを子育て支援ばかりに使うのか」と高齢者から反発を受けたこともあったという。
- 奥正親町長インタビュー後編では、「現役世代vs高齢者」という日本全国共通の課題をどのように克服してきたのかについて聞いた。
(湯浅 大輝:フリージャーナリスト)
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駐屯地の影響はわずか
──人口約5700人の奈義町には、自衛隊の駐屯地があります。雇用の受け皿としては大きな存在かと思いますが、他にはどのような仕事に従事している方が多いですか。
奥正親・岡山県奈義町長(以下、敬称略):町内にある自衛隊駐屯地(日本原駐屯地、約600人が勤務する)の他には、町内の工業団地で勤務されている方(町民の17〜18%が勤務)や、隣の津山市(人口約10万人)・美作市のサービス業に従事されている方々など、さまざまです。
──出生率2.95を記録したのは、結婚適齢期の世代が多い自衛隊駐屯地があることも関係しているのでしょうか。
奥:2014年に出生率2.81を記録した際、自衛隊勤務の方々を除いた数値を計算したことがあります。すると、2.61という数字が出ました。奈義町で暮らす自衛隊員はご家族を含め約400人程度で、もちろん出生率への好影響はありますが、すべてではないと考えています。
──やはり、現役の子育て世帯の移住者も多いのではないですか?
奥:2021年9月から2022年10月の数字で、Uターン者が91人、Iターン者が97人です。Iターンをする方々はメインが子育て世帯で、近隣の市町村や県内から移住していることがほとんどです。やはり「奈義町では子育てがしやすいらしい」という噂を聞きつけて、いらしているのではないでしょうか。
今年中には増加する子どもの数に対応するために、老朽化した2つの幼稚園と1つの保育園を統合し、幼保連携型認定こども園の「なぎっ子こども園」を開園します。給食も無料にする予定で、さらに子育て支援を充実させていきます。
──「なぎっ子こども園」着工を巡っては、高額な建設費に対して不満の声を抱く高齢者もいる、という一部報道もありました。多くの自治体は人口ピラミッド上、高齢者が大多数を占め、現役世代との対立に悩んでいると思います。奈義町では、こうした問題をどのように解決していますか。