東京都の小池知事は私立を含む高校の実質無償化を打ち出したが…(写真:Pasya/アフロ)
  • 東京都は2024年度から私立高校の授業料をすべての世帯に対して実質無償化すると発表。大阪府も2024年度から段階的に私立高校の無償化を進める方針だ。
  • いずれも少子化・子育て対策の一貫という。世帯年収により教育レベルが変わる「教育格差」が問題となっており、格差是正も狙いだ。
  • だが、慶応義塾大学の赤林英夫教授は「今回の私立高校無償化施策では、むしろ教育格差が拡大する可能性がある」と危惧。高校無償化で浮いた学費が中学受験に投じられるようになるという。なぜか?

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

──東京都・大阪府が私立高校の授業料を無償化します。この政策は教育格差の縮小につながるのでしょうか。

赤林英夫・慶応義塾大学教授(以下、敬称略): 今回の政策の意義は一定程度認めつつ、私立高校に限った一律無償化が「教育格差」縮小につながるかという点では、疑問が残ります。

 まず、今回の東京都・大阪府の政策は「無償化の対象となる世帯所得の上限を撤廃する」ものです。世帯年収が高い家庭の子どもの学費も、世帯年収が低い家庭と同じようにタダになる、という意味合いが強く、既にある教育格差の縮小にはつながりにくいでしょう。

赤林 英夫(あかばやし・ひでお)慶応義塾大学経済学部・教授
1986年東京大学卒業、88年同大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程終了。86年、通商産業省(現経済産業省)入省、96年米シカゴ大学経済学研究科で博士号取得(Ph.D.)。マイアミ大学ビジネススクール、世界銀行コンサルタントなどを経て97年、慶応義塾大学経済学部助教授、2006年から現職。2017年から、慶応義塾大学経済学部附属経済研究所こどもの機会均等研究センター長も務める。

 もう一つ、重要な問題があります。高校からの入学枠を廃止する中高一貫校が増加傾向にあるのです。

──それがどうして教育格差の問題につながるのでしょうか。

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