(写真:アフロ)
  • 過重労働で教員の人気が右肩下がりに落ちている。公立学校における2022年度の教員採用倍率は3.4倍で2年連続の過去最低となった。
  • 教員のなり手がいない背景には、「学校が子どもの成長のすべての責任を負うべきだ」という「学校依存社会」とも呼ぶべき親や地域の認識がある。
  • 教員不足により人材の質が劣化している懸念もある。教員の働き方に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授へのインタビュー後編。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

教員の人手不足の本質とは

──前回の記事で内田さんは「学校依存社会」からの脱却が急務だと説明されました。人手不足は深刻です。

内田良・名古屋大学大学院教授(以下、敬称略):どれだけ残業しても賃金アップに結びつかない「定額働かせ放題システム」が教員を追い詰めている状況は先に述べた通りで、長時間労働を強いられる教員の人気は落ちてきています。

内田良(うちだ・りょう)名古屋大学大学院発達科学研究科・教授
1976年生まれ。専門は教育社会学。福井県出身。学校管理下の組み体操や柔道を含むスポーツ事故、いじめや不登校の教育課題、部活動顧問の負担など、子どもや教員の安全・安心について研究。著書に『教育という病』(光文社新書)ほか。

 そもそも、教員の人手不足の背景は、正規の教員採用者数を意図的に減らしている結果です。子どもの数が減っていますから、自治体は解雇規制がある正規職員の採用数を減らしてきました。減少した分の正規職員の数は、「非正規採用者」つまり非常勤講師や再任用短時間勤務職員で埋めることになります。

 昨今の教員不足の本質は、雇用の調整弁である「非正規採用者」が減っているところにあります。彼らは正規採用者に比べても給料が安く、雇用も調節可能ですから自治体にとっては都合の良い存在でした。自治体の方針にもよりますが、全国の小中学校における非正規教員の割合は1〜2割。かつては正規採用で不合格になった人が非常勤講師として働いていたものですが、現在は(正規採用試験への)受験者数そのものが減っています。受験者の多くが合格するという状況では、必然的に非正規講師の登録者数も減少せざるを得ず、人手不足が深刻化する、という流れなのです。

──かつては学校の先生といえば「聖職者」であり、尊敬の対象でした。

内田:言いにくい話ではありますが、ここ数年、全国の学校関係者は「本来であれば受かってはいけない人が先生になっている」と打ち明けています。採用試験は都道府県教育委員会のレベルで行いますが、受け入れる側の立場にある関係者は危機を感じています。

──それは、熱意がない人が先生になっている、ということでしょうか。