- 2023年の出生数(速報値)は8年連続の減少で75.8万人と過去最少となった。
- 『限界国家』(双葉社)を2023年に上梓した作家の楡周平氏へのインタビュー後編では、人口減少社会をどのように生き抜くべきかを聞いた。
- 楡氏は、学歴偏重と過剰な高齢者向け医療サービスを見直すべきだと主張。既存の概念にとらわれない若者の発想に期待をかける。(JBpress)
(湯浅 大輝:フリージャーナリスト)
前編:小池都知事よ、築地に家賃無料の子育てタワマンつくれ!『限界国家』楡周平氏が語る少子化【出生数75.8万人の衝撃】
異常にカネがかかる「教育と医療」
──前編で楡さんは、少子化の背景には現代社会が抱える根本的な要因があると指摘しました。これらのほかに、日本固有の事情はあるのでしょうか。
楡周平氏(以下、敬称略):教育と医療のあり方を見直すべきです先ほど(前編)もお話ししましたが、先進国の中でも韓国・中国の出生率の低下は異常です。共通するのは「学歴信仰社会」。科挙の伝統を引き継ぐ、高学歴の人間しか、社会で高い給料と社会的地位を確保できない社会のことを指します。
こうした社会においては、(大学卒業までの)教育費がものすごくかかる。韓国はSKY(スカイ、三大難関大学)、中国では国家重点大学に合格しないと、その時点で人生のレールから外れてしまいます。
日本は両国よりはマシとはいえ、企業と親が学歴を重要視していることに違いはありません。大都市では中学受験熱が過熱しており、塾などの学校外教育に大金がかかります。子どもが1人ならまだしも、2〜3人も費用を捻出できる余裕はない家庭が多いでしょう。