- 2023年の出生数が過去最少の75.8万人だった(速報値)。婚外子が極めて少ない日本においては、婚姻数の減少が少子化とつながっており、未婚者の急増が少子化の本質である。
- 国立社会保障・人口問題研究所の調査によると結婚するカップルの約9割が恋愛結婚。1965年には見合い結婚が44.9%を占めていたが、2015年には5.3%まで低下した。
- 作家の橘玲氏は「(自由恋愛全盛の)現代は“一夫一妻制”がもはや破綻しており、特に大量の男性が結婚できない時代」だと説く。急増する未婚男女を救うソリューションは? インタビューを2回に分けて掲載する。(JBpress)
(湯浅 大輝:フリージャーナリスト)
【後編】橘玲氏に聞く少子化対策「自由恋愛で『一夫一妻制』は崩壊!会社は社内結婚の斡旋を」、男性は「インセル」の懸念も
現代社会の「性戦略」はシビアだ
──橘さんは以前から「自由恋愛をして結婚し、子どもを産む」という社会通念が広がった現代社会は人類史を振り返っても極めて異常であり、特に大部分の男性にとって悲劇的だと主張されています。どういうことですか。
橘玲氏(以下、敬称略):誰も触れたがらないので私が言うしかないのですが、若い男女の恋愛はメディアがつくった「対等な男女が自由に交際して、恋愛関係に発展する」というイメージのような甘いものではありません。「性戦略」とは、もっとシビアなものです。
ヒト以外の多くの生き物と同じく、ほぼゼロコストで精子をいくらでもつくることができる男と、卵子の数に限りがあり、妊娠すれば出産まで9カ月もかかり、その後も授乳などで大きなコストがかかる女では、性戦略が「非対称」になります。
後世に残す遺伝子を最大化する最適な性戦略は、男にとっては「妊娠可能な女と片っ端からセックスする」ですが、これでは生まれた子どもが放置され母親は路頭に迷ってしまいますから、女にとっての最適戦略は「できるだけ男を選り好みする」になります。
恋愛は2段階に分かれていて、最初は男が女に求愛し女が選択し、次の段階では、選ばれた男(モテ)が長期につき合う女を選択します。
少女マンガやラノベで繰り返し描かれてきた「王子様が地味な女の子に恋をする」というストーリーは、この第2段階を舞台にしていますが、その前の段階で多くの男(非モテ)が脱落してしまうことは、これまでずっと見てはいけないものにされてきました。